船学の動画サイトがOPEN!

もしも、パイロット乗船前に舷梯が動かなかったら(その1)

舷梯にかかわる各種トラブルの発生状況及びその対応方法について考えてみます。

入港前日に舷梯振り出しテストを実施して異常のないことを確認しておいても、入港当日に舷梯が動かないというトラブルがときどき発生します。パイロット乗船まで残り1時間の余裕もないときのトラブル発生に船橋及び甲板部作業員は非常に焦ります。最も簡単な対処方法は、逆舷の舷梯を使用することです。舷梯不具合発生をVHFでパイロットに説明して、可能であれば逆側の舷梯を使用することを承諾してもらいましょう。当然、ウェザーサイドの舷梯を使用することになるので、可能ならば針路を調整してリーサイドになるようにします。

両舷の舷梯が同じタイミングで動かないことはまずありません。もし両舷共に動かないならば、エアー関係のトラブルと考えられます。圧縮空気の圧力が弱いか、流量不足が原因です。極寒冷地でエアーパイプ内部のドレンが凍ってしまってエアーの流量不足で舷梯が動かないこともありました。

どうしてもエアーモーターのトラブルで動かない舷梯を使用したい場合は、逆舷のエアーモーターとの入れ替えを試みます。逆舷のエアーモーターを外して来て取り付けるのです。舷梯が動かなくなる多くの原因がエアーモーターの固着です。エアーには水分が多く含まれるため、エアーモーター内が発錆してベアリングやローター羽根が固着気味になることが多々あります。あるいは、ローター羽根の摩耗により出力が低下して舷梯を巻き上げることができなくなっている可能性もあります。代替えエアーモーターが利用できない場合は応急処置で直すことは難しいので、逆舷の舷梯を使用するしか方法はありません。

時間的に余裕のあるときはエアーモーターを修理しますが、甲板部だけで解放整備するにはある程度の経験と技量が必要です。もし、甲板部だけで無理ならば機関部に応援を依頼してエアーモーターを解放して点検整備しましょう。もちろん解放整備する前に図面で内部構造を確認し、ローター羽根やベアリングの予備品があることを確認しなければいけません。

機器を解放するときは図面で内部構造を確認し、予備品があることを確認することが基本中の基本です。予備品がないのに解放してベアリング等の部品が壊れてしまっては修理不可となり、お手上げ状態です。

エアー駆動機器のトラブル発生の諸悪の根源はエアーに含まれる湿気です。完全に水分(ドレン)を除去することは難しいかもしれませんが、少しでも除去するために舷梯を使用する前に空吹かしして可能な限り水分を除去します。

ドレンフィルター内にドレンが溜まる量の多さを見れば、どれだけエアーに水分が多く含まれているかよく判ります。水分除去した後は潤滑油の注油です。エアーに油分を確実に含ませることです。そのためには注油器による注油量を適量に調整しておきます。もちろん使用する油の種類は指定されたさらさらのタービン油です。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。