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鉄製パイプが自由自在に伸び縮みできる継手

パイプとパイプをつなぐ『継ぎ手』の話です。

パイプとパイプは左写真のようにフランジ継ぎ手で接続している場合もあれば、溶接で継いでいる場合もあります。フランジ継ぎ手より溶接継ぎ手のほうがコスト的には安価なため、最近の船では建造費コスト削減のためにパイプの接続にはフランジ継ぎ手を極力使用せずに溶接継ぎ手が多く使用されています。ところが溶接継ぎ手は会社にとってはメリットがあるかも知れませんが、乗組員にとってはデメリットが大きいのです。

例えばパイプの錆びによる穴を修理するときにフランジ継ぎ手であれば、フランジ部でパイプを取り外してEngine Work Shopで溶接修理できますが、パイプが溶接継ぎ手で延々とつながっていると簡単には外すことができません。そのため危険物積載船のように甲板上で溶接作業ができない船では修理に一苦労です。パイプバンドやデブコンを使って応急修理せざるを得ません。

フランジや溶接以外にパイプを繋ぐ「Dresser Coupling」を知っていますか?別名「Flexible Joint」又は「Expansion Joint」とも呼ばれ、日本語で言うと「伸縮継ぎ手」です。Hogging /Saggingによるカーゴパイプやバラストパイプの伸び縮みを吸収するために、このDresser Couplingが数十メートル間隔にパイプとパイプを接続するように設置されています。

タンカーでは内地(揚地)入港前のシンガポール通過前後の穏やかな海域でカーゴライン圧テストと称して、パイプに貨物油を詰めて規定の圧力をかけてフランジやパイプから油漏れがないことを確認します。入港数日前の圧テストで漏れなかったからといって、揚荷役中に漏れない保証はありませんが、事前確認のために必ず実施しています。船体が大きく撓む(たわむ)ほどの大時化にあった後は要注意です。パイプやDresser Packingのズレによって、Dresser Couplingからの漏油発生の可能性が高くなります。

Dresser Coupling部から油が洩れると、漏洩を止めるために周囲のボルトをバランスよく増し締めします。これで漏洩が止まればいいのですが、止まらない場合はパッキンの交換が必要になります。Dresser Couplingがどのように気密・水密性を保っているかというと、Dresser Couplingの一方がパイプに固定されており、もう一方が自由に伸び縮みできるようになっており、両側に入れ込んだラバーパッキン(Gasket)で気密・水密を保持しているのです。

船内のいたるところで使用されている細い銅管のパイプも途中に継ぎ手を使用しています。この継ぎ手のことを「ユニオン継ぎ手(Union Coupling)」と言います。

ユニオン継ぎ手は外見上はナットで締め付けているだけですが、内部に「こま(Sleeve)」という部品が入っているのを知っていますか?この「こま」が入っているからパイプがユニオン継ぎ手と圧着して、継ぎ手部分から水や油が漏れないのです。この「こま」を中に入れずにパイプ同士を接続しても漏れてしまいます。普段目にしている道具や機器には色んな工夫がされているので、どんな小さな道具や機器でもできる限り内部構造や仕組みを理解するよう心がけて下さい。

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