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船の免許あれこれ

楠田 大晟楠田 大晟

この度、「教室」を中心に記事を書かせて頂く事になりました、楠田と申します。とても実務的な記事が多い“船学”ですが、私の記事では、これから船員になろうとされる方に向けて幅広い内容に触れたいと思います。そして、初心者の方でも読み易い形でお届けします。

はじめに

皆さんは、様々な乗り物に「免許」がある事を習慣的に知っているかと思います。身近なものですと、自動車がありますよね。自動車免許では、まず大きな区分けとして、旅客の運送を含まない「第1種」、そして旅客の運送を含む「第2種」があり、更には、その自動車の排気量、乗車定員、 貨物積載量などによって、大型、大型特殊、中型…などと区分けがあります。そして、これらの区分けは「道路交通法」によって定められています。

では、船にはそういった区分けはあるのでしょうか?意外とこれについては、よく知らない人も多いのではないで しょうか。船舶免許には、以下のような区分けがあり、これらは「船舶職員及び小型船舶操縦者法」という法律に規定があります。少し名称が長いので、“船舶職員法”や“職員法”等と言われる事が多いです。

小型船舶の免許

まず広く知られている船舶免許として、「小型船舶操縦士」という資格があります。(ここでいう小型船舶とは、船のトン数が20トン未満のものを基本としています。)一般の方でも、釣りが趣味だったりで、持ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか。私事ですが、私の父も釣りが大変好きで、小型船舶の免許を持っています。

MEMO

総トン数20トンを超えていても、以下の条件をすべて満たしていれば、「小型船舶」という扱いになります。

・一人で操縦が行える構造
・長さが24m未満
・スポーツまたは、レクリエーションのみに用いられるもの

冒頭で述べた自動車免許のように、この小型船舶免許にも種類があります。自動車と違って、小型船舶では「船の大きさ」、「航行区域」、「エンジンの出力」によって以下のような区分けがあります。

特定の有無

「特定」とは、旅客(遊漁船に同乗して、釣りを楽しむ人も「旅客」に含みます)の運送ができるか否かを指します。免許証に「特定」と記載があれば、旅客の運送をする事ができます。自動車免許でいう所の、第1種・第2種です。小型船舶操縦士試験の合格に加えて、国土交通大臣が定める「救命設備等に関する小型旅客安全講習の課程」を修了する必要があります。つまり、小型船の操縦や自身の安全だけでなく、旅客の安全確保も、操船者が担う事になるのです。

1級

無制限でどこでも行けますが、沿海区域の外側80海里(約150km)より遠い海域に行く場合には、6級海技士(機関)の資格を持った人を同乗させなくてはなりません。理由は、沖合で何かしらエンジンに異常があった場合に修理や、応急措置が必要となる可能性があるからです。
※満18歳以上で取れます※「沿海区域」については、航行区域の記事で述べたいと思います。

2級

海岸から5海里(約9km)までの海域であれば、航行する事ができます。あまり出れないように感じる人も居るかもしれませんが、瀬戸内海を十分走れる距離です。(ただし、18歳未満の場合は、5トン未満の小型船舶しか操縦できません。これを「技能限定」と言います。)原付同様、満16歳以上で取れます。

2級(湖川小出力限定)

総トン数5トン未満、エンジンの出力が15kW(約20馬力)以下の小型船舶のみ、操縦が出来ます。また、湖や川のみ航行でき、海に出る事は出来ません。原付同様、満16歳以上で取れます。

特殊

水上オートバイ(水上バイク)のみを操縦できます。航海に出られる範囲は、湖岸や海岸から2海里(約3.7km)までの水域を操縦できます。通常の小型船舶との明確な違いは、エンジンにあります。通常の小型船舶は、プロペラを水中で回転させる事で進みますが、水上バイクは、「ウォータージェット推進」といって、まず海水を取り込み、その海水を思いっきり後方に噴射する事で、大きな反作用を得ます。その反力を用いて前方に進みます。たとえ1級免許を持っている人でも、特殊免許がないと水上バイクには乗れません。

【参考】水上バイクの航行区域の詳細については下記をご覧下さい。乗船される方は、事前によく調べられる事を推奨いたします。


参考
水上バイク航行区域違反で罰金50万円!?あなたは航行区域知っていますか?ボート業界の広報部 ボーターズ

大型船舶の免許

さて、大型船舶ではどうなっているのでしょうか。大型船舶には「海技士」と呼ばれる資格があります。小型船舶との大きな違いは、“航海”と“機関”で分かれている事です。(その他にも、通信、電子通信がありますが、今回は割愛させて頂きます。)

また、自動車免許や小型船舶と違って、旅客の運送の有無による資格自体には区別はありません。海技士の免許は、それぞれ以下のように分かれています。

航海

一級から六級に分けられていて、航海の場合は、船の総トン数、航行区域、乗船する役職・職位によって、必要な資格の級数が異なってきます。


参考
船舶職員の乗組みに関する基準国土交通省 中国運輸局

ただし、下記のような限定の種類があります。

履歴限定

その海技免許を取得してから所定以上の乗船履歴がないと、就く事のできる船舶職員の職に制限があります。


参考
履歴限定解除早見表国土交通省

船橋当直限定

航海当直の職務に限定された資格です。それ以外の職務に就く事は出来ません。また、部員として乗船し、航海当直業務を行う場合には「航海当直部員の認定」及び「船員手帳に証印」を受ける必要があります。

当該認定を受けるための条件や提出書類については、下記のホームページに記載がありますので、こちらが参考になります。


参考
航海当直部員の認定国土交通省 関東運輸局

(船内の役職・職位・部員、当直業務などについては、また別の記事で詳しく述べたいと思います)

能力限定(非ECDIS限定)

ECDIS(Electronic Chart Display and Information System:イグジスやエグディスと呼ばれます)とは、電子海図を表示する機器の事で、車で言うカーナビに近いものです。この限定がついている海技免状では、電子海図を搭載している船舶に船長、航海士として乗り組む事が出来ません。


参考
非ECDIS能力限定の解除について国土交通省 北海道運輸局

機関

航海と同じく一級から六級に分かれており、機関の場合は、船のエンジン出力、航行区域、乗船する役職・職位によって、必要な資格の級数が異なってきます。


参考
船舶職員の乗組みに関する基準国土交通省 中国運輸局

限定の種類は以下の通りです。

履歴限定

航海同様に、海技免状を取得したからと言って、すぐにどの役職にでも就けるわけではなく、一部の役職に制限があり、所定以上の乗船履歴を経て、限定解除をしたのち、初めて役職に制限なく就く事が出来ます。


参考
履歴限定解除早見表国土交通省

機関当直限定

船内で行う職務が“機関当直業務”に限定された資格です。それ以外の職務に就く事は出来ません。こちらも航海と同様に、部員として乗船し、機関当直業務をする場合には、認定と証印が必要です。認定の条件についても同じく下記URLを参照ください。機関当直業務についても、今後の記事で触れたいと思います。


参考
機関当直部員の認定国土交通省

機関限定

取り扱うエンジンの種類について限定されるものです。現在運航されている船は、ほとんどがディーゼルエンジン(内燃機関)を使用していますが、一部の船ではタービンエンジンを使用している船もあります。例えば、内燃機関限定の海技免状を持った人は、タービンエンジンを搭載した船では、機関士として乗船出来ない事になります。

少し難しい話もありましたが、今回は船舶の免許について述べていきました。なお、それぞれの免許の取得方法についても、また別の記事で触れたいと思います!

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