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水路書誌の電子版:ADP/AENPって何?

航海の安全に欠かせない情報、水路書誌の電子版の話です。

水路書誌とは

「水路書誌とは、海図に表現できない港湾・航路・気象・海象の概要、航路標識の状況、潮汐・潮流の予測値、惑星・恒星等の位置等についてそれぞれ刊行されており、 海図の参考書として利用されています。*」航海士や船長はこれらの書誌に記載されている情報を参考に、航海計画や実際の航海を行います。日本の水路書誌は、水路誌と特殊書誌に分かれており、前者は主に航海計画時などにルート上の様々な情報、例えば、航海目標や気象・海象の傾向が文章だけでなく、図や写真も交えて紹介されており、後者は、チャートカタログや灯台表、潮汐表や天測暦が該当し、主に航海に関するデータを取得するのに利用されています。

なぜ英国の水路書誌を使う?

日本の海上保安庁が何冊にも分けて詳しい書誌を発行しているように、各国沿岸の状況はその国の水路部(海洋情報部)がよく把握しているのは周知の事実です。一方で、各々の商船が、航海ごとに世界各国の水路部から、別々にそれらの書誌(情報)を購入するのは現実的でなく、また、必要になったときに、世界中のどこの港でも、該当する国の書誌がすぐに購入できるとは限らないため、外航船では英国の水路部(UKHO: United Kingdom Hydrographic Office)が発行している全世界対応の水路書誌をまずは利用するのが一般的です。

表題にあるADP/AENPとは、UKHOが発行している水路書誌の電子版の名称で、正式にはADP: ADMIRALTY Digital Publications 、AENP: ADMIRALTY e-Nautical Publicationsと呼ばれています。このADP/AENPは、日本を含め、世界の80%の旗国で紙版の水路書誌の代わりに使用することが認められています*。(詳細は旗国や船級協会にご確認ください。)

ADP / AENPの内容は?

ADP/AENPは、日本の水路書誌の収録の仕方と少し異なります。

ADPはATT (ADMIRALTY Total Tide: 潮汐表)、ADLL (ADMIRALTY Light List: 灯台表)、ADRS (ADMIRALTY Digital Radio Signals: 通信やReporting関係の情報をまとめたもの)で構成されており、ATT/ADLL/ADRSの中で、さらに海域やデータの種類ごとに細かく分かれています。

他方、AENPは、日本の水路誌に該当する「Sailing Direction*」に加え、天測暦、さらに、船長や航海士が必要な知識をまとめた「Mariner’s Handbook」、電子海図に関して必要な情報をまとめた「Guide to the Practical Use of ENCs」など、航海を行うのに必要な情報が総合的に収録されており、90冊(2021年5月現在)の中から、必要なものを乗組員や船舶管理会社が選択し、購入します。

ADP/AENPのライセンス期間は基本的に1年(詳細な説明は省略します)で、事前に登録されたMain PC / Backup PCに対して閲覧用のライセンスが発行される仕組みとなっています。それぞれ専用のソフトウェアとライセンスキーやライセンスファイルを利用して情報にアクセスする仕組みなので、例えば、AENPのPDFファイルは一般のPCでは開けません。

電子版になって、だいぶ楽になりました。

ところで、これらADP/AENPに記載されている情報は常に最新の情報に更新し続ける必要があり、海図と同じように毎週、改補が発生します。電子版ではENCと同様に、データを読み込ませるだけで済みますが、紙版の頃は、毎週、これらの書誌に最新の情報が印刷された紙を切り貼りしていました。まるで、小学校の図工の時間です。私はその作業が嫌いでしたが、ほとんどの船で電子化された現在は、不要な作業となっているはずです。(まだやっている船があれば、会社に嘆願することをお勧めします。)

また、紙版の頃は、潮汐表からデータを取得し、各時間の潮位を自分でエクセルを使って計算していましたが、電子版になってからは、グラフ表示もATTのソフトウェアでできるので、少なくとも計算は脱エクセルとなっています。潮汐を調べるという作業もこの10年で急激に変化した印象です。

ただし、

  • NP131: Catalogue of Admiralty Charts and Publications (水路図誌目録)
  • NP133A: Paper Chart Maintenance Record
  • NP133C: Admiralty ENC Maintenance Record
  • NP350: Admiralty Distance Tables (距離表)

は、2021年5月現在も紙版のみの発行なので、注意が必要です。

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