漂流する超大型タンカーの救出記録 12月13日(金)16:50〜NHKニュースシブ5時で放送

波浪、風浪、うねり、磯波、波の呼び方にもいろいろあります

私達船乗りが毎日、目にしている『波』の話です。

「波」にも呼び方がいろいろあります。「波浪」「風浪」「うねり」「磯波」。英語で言えば、「波浪」はWaves、「風浪」はWind Waves、「うねり」はSwell、「磯波」はSurfです。では、これら4種類の定義は何でしょうか?「風浪」は文字通り、風によっておこる波、海上で吹く風によって発生する波です。風浪の波長は比較的短く、風が止めばエネルギー供給がなくなり、やがて消えてなくなります。しかし、波長の長い波は消滅せずに、はるか遠方まで伝播します。

その遠方まで伝播した波のことを「うねり」と呼びます。そして、「風浪」と「うねり」を併せた広義の意味の波を「波浪」と言います。ですからテレビの天気予報で説明する波浪注意報や波浪概況とは「風浪」と「うねり」を併せた波全体の状況を説明しています。最後の「磯波」は大型船にはあまり関係がない波です。英語のSurfでわかるようにサーファーがSurfingに利用する波のことです。海岸付近の浅瀬で波長が短く、波高が高くなって砕ける波のことです。

風により発生する波「風浪」は、そのエネルギー源である風の強さに比例し、大きければ大きいほど高い波となることは常識的に理解できます。しかし、強い風がただ吹くだけでは高い波は生まれません。強い風が突風のように20、30分程度吹いても巨大な波には発達しません。また、強い風が、港湾内のような場所で数キロ程度の範囲でいくら長時間吹いても巨大な波にはなりません。

10メートルをも超える巨大な波が発生する条件は、強い風が何十時間も継続して、数百キロの範囲にわたって一定方向に吹き続ける場合です。風浪がどれだけ高くなるかは、どれだけの強い風がどれだけの時間、どれだけの長い距離で吹き続けるかによるのです。「風速(Wind Speed)」「吹続時間(Duration)」「吹送距離(Fetch)」はまさに波の3大栄養素です。

台風や低気圧による大時化の中、夜間の月明かりもない真っ暗な海上で、どうしても船の針路を大きく変えざるを得ない場合があります。船長にとって大きなうねりで激しくローリングやピッチングする船を変針させるときは非常に緊張する場面です。そんなときに船長から「3/O、今、うねり、波はどっちから来ているか?」と聞かれて、皆さんは「真っ暗で見えません、わかりません。」と答えていませんか?

それでは失格です。真っ暗で風浪やうねりが見えないときでも、波のやってくる方向がある程度わかる方法があります。レーダーです。

レーダーを1.5マイルや3マイルレンジにすれば、波紋が綺麗にレーダーに映り、波がやってくる方向が一目瞭然です。船長が時化た闇夜で変針するときは、船長に聞かれる前に波方向をアドバイスしてあげて下さい。

波と言えば、皆さんは「有義波高」の定義を覚えていますか? 観測された波高の大きい方から3分の1の波高の平均です。この有義波高は人が目視観測した波高に極めて近いそうです。私達船員は小さな波には関心がありません。この有義波高の大きさに注目します。船が出会う波のうち、理論的にはほぼ20分間(100波)に1つは有義波高の約1.6倍の波高、2~3時間(1000波)に1つは約2倍の波高の巨大な波が押し寄せると言われています。

海上で時化て船がローリングやピッチングで大きく揺れているとき、何分かに1回、あるいは何回かに1回の間隔で船が非常に大きく横揺れすることがあります。同じように何回かに1回の波が船首に衝突してドドドっと大きな振動が伝わってきます。このとき、まさに有義波高の1.6倍や2倍の大きな波を私達は体験しているのです。大時化が凪いで穏やかな海になっても安心してはいけません。凪いでいる海上でも予想以上に大きなうねりが伝播され、甲板上に青波が上がり、機器損傷や海中転落が発生する危険性があります。これはまさに有義波の理論の通り、予想以上に大きな波が忘れた頃に押し寄せる現象です。

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