船学の動画サイトがOPEN!

爆発しごろな酸素と可燃性ガスの絶妙な混合比率

爆発すれば悲惨な大事故となる『可燃性ガス』の話です。

タンカーやLNG船等の危険物船積載船の荷役中は、危険なガスが居住区内に流入しないように居住区のドアやダンパーを全て閉鎖する必要があります。そして昔はエアコンの空気取り入れ口(Air Intake)まで閉鎖して居住区を完全に密閉にしてガスの流入を防止していました。しかし、この完全閉鎖式には問題があります。エアコンの空気取り入れ口である「Air Intake」まで閉めてしまうと、居住区内部が負圧となりドアやダンパーの隙間から外部の空気を吸い込むことになります。

その場合デッキ上で漏洩したガスを予期せぬ場所から吸い込み居住区内への流入を許すことになるので非常に危険です。従いISGOTTにも規定されていますが、最近はAir IntakeはOpenのままとして居住区を適当な正圧に維持する部分循環式という方法が求められています。ガスの侵入を1ヶ所に限定するためにAir Intakeからのみ外気を吸い込むようにして、Air Intakeにガス検知器を設置してガス流入の有無を常時監視しているのです。

爆発しごろな酸素と炭化水素ガスの絶妙な混合比率があります。例えばLNGガスであるメタン(CH4)は酸素濃度が12.0Vol%~20.9Vol%の範囲、メタンガス濃度が約5Vol%~15Vol%の範囲で燃焼可能です。この酸素とメタンガスの両方が所定の範囲で混合している場合に燃焼するのです。逆にガス濃度が高過ぎる場合には意外にも燃焼しません。16Vol%以上の高濃度のガスと適度な酸素が混ざり合ってもガス爆発の可能性は低いのです。このようにガスが危険範囲より高濃度の状態をガスリッチ(Gas Rich)またはオーバーリッチ(Over Rich)と呼びます。ある意味「過ぎたるは及ばざるがごとし(Too much water drowned the miller.)」です。

原油タンカーのガスフリーとLNG船のガスフリーで大きな相違点となるのはそのガスの重量です。LNGガスはほとんどがメタン成分であり、原油のガスより非常に軽いのです。ですからLNGガスをイナートガスで置換するときは、タンク底からゆっくりとイナートガスを入れてやり、下から押し上げるピストンフロー方式で境界層を壊さなければ、非常に短時間でメタンガスをイナートガスに置換することができます。

一方、原油ガスはイナートガスとそれほど明確な比重差がないので、境界層がとても壊れやすくガスフリー作業にとても神経を使います。ひとたびイナートガスと原油ガスの境界層が壊れると効率良い置換ができなくなり、イナーティング作業に多大な時間を要することになってしまいます。一般的にはガス置換するためにはその容量の2~3倍の置換量が必要と言われています。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。