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下船して道草するなら、覚悟はできていますか?

あまり機会は無いかも知れませんが、乗組員が上陸したときに利用する『乗り物』の話です。

多くの皆さんが自動車の免許を所持しており、実際に自動車の運転をすることでしょう。当然のことながら自動車の運転にはたくさんの危険が潜んでいます。私達船員は原則的には乗船中に自分自身で自動車やバイクを運転することを自粛しています。

ドックや長期停泊中はレンタカーを借りて観光旅行や帰宅する機会があります。しかし、極力、自分での運転は避けるべきです。その理由は万一事故を起こしたときに、船の運航に多大な支障がでる恐れがあるからです。自分自身が怪我をしたときはもちろんのこと、事故処理のために警察との対応で帰船できない場合、船の出港に影響します。

また、最悪の場合は欠員で出港せざるを得なくなり、船の運航に多大な影響を及ぼします。日本人船員は練習船で厳しく教えられていますが、自身の過失による「帰船遅れ」は船員の重大な職務違反で、厳罰に処せられても仕方ありません。ましてや人身事故でも起こせば、解雇処分の可能性まであります。従って、乗船中は上陸しても可能な限りリスクの高い運転行為は慎むべきです。とは言ってもせっかくの上陸のチャンスです。大いに疲れを癒してストレスを発散したいところです。悩むところですが、乗船中の自動車運転について明確な規定が定められていないときは、自動車やバイクの運転は控えた方が無難です。

乗船中は自動車・バイクの運転はもちろんのこと、大怪我のリスクがあるスキー等のスポーツ・行事も慎むべきです。このことが明確な文書になっているかどうか知りませんが、船員の常識として心得ておくべきです。ある管理会社では、某外地でバイク事故が多発しているので、文書でもって正式に上陸時のバイクや自動車の自らによる運転を禁止しています。

会社は乗組員の乗船中の事故だけでなく、下船して帰宅途中の事故も可能な限り避けたいと考えます。私達船員は下船後、直行で速やかに帰宅することが原則です。もし途中で観光旅行をして怪我をすれば、労災も適用されません。自己責任で途中で遊んで帰ると言ってもやはり何か重大な事故が起こった場合は会社を巻き込んでしまいます。そのため会社は正式には「下船したら、出来る限り真っ直ぐに家に帰りなさい。」としか指示することができません。

昔インド人船員から「下船時の飛行機をムンバイ直行便でなく、遊んで帰るからシンガポール経由の飛行機に変更して欲しい。」という申し出がありました。当然のことながら、会社は正当な理由と認めず、フライト変更をしませんでした。ですから皆さんも下船後は出来る限り速やかに家に帰るのが基本であることを念頭に入れておいて下さい。さもなければ、自己責任で覚悟して寄り道しましょう。

帰船遅れについてですが、最近のSecurity強化によってLNG船などは上陸できる手段が非常に限定されており、専用の定期便のバスやボートでしか上陸・帰船できないことが多く、しかも出港が午前中となるため、乗組員が翌朝の出港時間に遅れるという問題は発生していません。他の船種の実態を詳しく知りませんが、時間にルーズな船員が乗り組む船では今でも帰船遅れによる出港遅延という由々しき事態が発生しているのかも知れません。

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