船学の動画サイトがOPEN!

船に祭っている『神様』の話

「困ったときの神頼み」という言葉がありますが、ここでは船に祭っている『神様』の話を紹介します。

古くから日本人は「八百万(やおよろず)の神」として多くの神様を崇め祭り、万物に霊が宿ると信じてきました。台所や便所にさえ神様がいると信じているのが日本人です。日本の神様は非常に寛容で、仏教も神道に取り入れられ融合されています。その証拠に正月に初詣に行くのは神社であったりお寺であったり、あまり区別しておらず、こだわっていない人が多いようです。そのように神様を身近に感じている日本人ですが、昔から日本人船員も同じ様に神様を信じて、日本人船員が乗る船の船橋には必ず神棚が祭られていました。

しかし、現在は神棚を船橋から船長室へとシフトしている船が多いようです。船によっては神棚がない船もあります。「困ったときの神頼み」ではありませんが、毎朝、船橋に上がってきたときに、まず神棚に手を合わせる船長もいました。事故を起こさないようと切に願う神頼みです。

ECR(Engine Control Room)にも神棚を設けている船があります。また、船長室やECRの神棚の上に筆で「空」や「雲」と書いた半紙を貼り付けているのをときどき見掛けます。この「空」や「雲」の意味は、神様を狭い天井のある場所に祭ることは失礼にあたるので、「神様がおられる神棚の上には空や雲が広がっていますよ。」という意味を込めて張り紙をしているのです。

船の神棚に祭られているのは「金比羅山」や「春日大社」ですが、神様への正式な参拝の作法は、「二礼二拍手一礼」です。正月元旦に神棚のある船橋や船長室に集まって、全員で一年の安全運航を祈念しますが、そのときの礼の作法がニ礼二拍手一礼です。是非皆さんも正式な礼の仕方を覚えておいて下さい。

海の神様と言えば、以外と知られていないかも知れませんが、七福神の「えびす」(恵比寿・恵比須・蛭子)さんは海の神様です。「えびす」さんは通称「えべっさん」と言いますが、大阪では「商売繁盛、ササもってこい!」の掛け声で有名です。えべっさんは商売繁盛の神様だけでなく海上・漁業の神様でもあるのです。

神棚以外にも日本船ならではのものが日本船から無くなりつつあります。日本人船員数が減るに伴って畳部屋、大風呂なども利用者が少ないため、船内から消えつつあります。昔は船内に畳部屋が必ずあり、畳の上にごろんと寝転ぶと非常に癒されました。やはり日本人は畳の匂いやその感触に安らぎや懐かしさを感じるのです。また、ときどき大風呂にたっぷりと清水や海水を張って一人で優雅に温泉気分を味わうこともありましたが、最近は大風呂がない船が多いでしょう。日本文化の象徴である畳部屋や大風呂がなくなるのはちょっぴり寂しい気分です。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。