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風と波の規模と威力

安達 直安達 直

櫓櫂舟から巨大船までを操ることに恵まれた海技者として、また、その海技力を礎にした船舶管理者として、海運が急成長した時代を生きて心に残った経験や持論を纏めておきたい。

概説

巨大船の安全航行にとって警戒すべき波浪は、波高4mが1つの目安となろう。これは、如何なる方位からの波浪に対しても無難に全速航行できる波高の限界であるが、先ず正面からの波浪が対象となるので変針や減速で対応している。

「気象庁の風浪階級表」5以上の階級と航行状態を概説すると次のようになる。

  • 階級5:波がやや高い(2.5-4.0m)までは、まず大型船の安全な航行には大丈夫。
  • 階級6:波がかなり高い(4.0-6.0m)以上の荒天海域は、避航するのが無難。
  • 階級7:相当荒れている(6.0-9.0m)では、波浪と出会う角度と速度を調節して慎重に航行。
  • 階級8:非常に荒れている(9.0-14.0m)では、船体の安全確保と荒天海域から離脱を図る。
  • 階級9:異常な状態(14.0m-)、このような最悪に陥らないように避航する。

上の「気象庁の風浪階級6」は、下の「ビューフォート風力階級7」に相当する。

また、「うねりの階級」は次の表現が一般的である。

  • 「短く」:波長100m未満、周期8秒以下程度。
  • 「中位の」:波長100m以上200m未満、周期8.1秒から11.3秒程度。
  • 「長く」:波長200m以上、周期11.4秒以上程度。

ビューフォート風力階級表

0:0.3m/s未満で鏡のような海面
1:0.3-1.6m/s未満で有義波高0.1m程度
2:1.6-3.4m/s未満で有義波高0.2m程度
3:3.4-5.5m/s未満で有義波高0.6m程度
4:5.5-8.0m/s未満で有義波高1.0m程度
5:8.0-10.8m/sで有義波高2m程度
6:10.8-13.9m/sで有義波高3m程度
7:13.9-17.2m/sで有義波高4m程度
8:17.2-20.8m/sで有義波高5.5m程度
9:20.8-24.5m/sで有義波高7m程度
10:24.5-28.5m/sで有義波高9m程度
11:28.5-32.7m/sで有義波高11.5m程度
12:32.7m/s-で有義波高14m超

台風による荒天

台風による荒天は温帯低気圧とは異質であり、巨大な渦巻きが発達しながら進行し海上を撹乱する。特に進行方向に対して台風右後方の海域は、台風進行に伴う風向の変化により異方向の波浪が発生し相互干渉して三角波を生じ混沌となる。

1935年(S10)9月26日、勇猛果敢にも台風荒天下での演習を断行した日本帝国海軍の戦艦、空母、計10隻が40N/147E付近で遭難した。
当時、風速30m/s、波高15m、気圧957mbar(hPa)が観測された。
被害は、駆逐艦「初雪」、「夕霧」が船橋前で船体切断、艦首部喪失。「睦月」が艦橋圧壊。空母「龍讓」は艦橋破損。「鳳翔」は飛行甲板前端圧壊、羅針艦橋での操艦不能。重巡「那智」航海長が観測した大波浪は、波長100-150mで波高10-15m(波長高比:約10)三角波を除くとされ、更に水雷戦隊の海域では、波長:波高が200m:15m(同比:13.3)と最悪であった。
帝国海軍は、この遭難事件を軍機として改善/再発防止に努め、以後、類似海難の再発を許さず、戦争には勝てなかったが荒天には打ち勝った。この完遂は高いモラルと集中力に因る結果であり、帝国海軍の艦艇運用技術と対応力の優秀さを示している。

また、次の「風速と波長/波高の関係」の資料は、前述の遭難記録からも信憑性有りと心得置くべきであろう。しかし正面から押し寄せる巨大な波の斜面を駆け上ろうとする漁船が機関全速にしても後方へ滑り落ちる映画を観たが、これは正に映画の世界だ。

風速と波長/波高の関係

① 風速70m/sが相当時間連続すれば、波長500m/波高23-26mの海面状態となり得る。
② 風速50m/sならば:280m/15-18m (日本近海で約2回/年、発生)
③ 風速40m/sならば:180m/11-14m (日本近海で約10回/年、発生)

 

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