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切れるタイミングが絶妙な弱いひも

救命艇と同じように私達船員の命を守るための最終手段である『膨脹式救命いかだ』の話を一つ。

Life Raftの自動離脱装置には、「Weak Link」というものが付いています。「Weak Link」とは文字通り「両方をつないでいる弱い紐」のことです。船体に固縛しているLife Raftには、船が水深4m程度まで沈んだときに自動的に本船から離れるように自動離脱装置が装備されています。しかし、本船から上手く切り離されたとしても、Life Raftが展張しなければ役に立ちません。

そこで「Weak Link」がLife Raft展張のために重要な役割を果たします。まず、Life Raftが本船から切り離されたとき、「Weak Link」に結ばれた自動索(作動索)が引っ張られてLife Raft内のAir BottleがOpenし、その圧縮空気によってLife Raftが展張します。そして、次のステップとして船と一緒に沈んだLife Raftに浮力が働いて「Weak Link」が引っ張られて自動的に切断されて、Life Raftは本船から離れて浮上します。

「Weak Link」の役割は①Life Raftを展張させる(ここまで切れない)、②展張後、海面に浮かぶためにLife Raftを船体から切り離す(ここで切れる)、という2種類です。繰り返しになりますが、Weak Linkには「Life Raftを膨らませる機能」と「Life Raftを船から切り離す機能」の2種類の重要な役割があるのです。

文字通り「Weak Link」はある程度の弱さが必要で、強すぎてはいけません。Life Raftを引っ張って、中のエアーボトルを作動させる強さは必要ですが、船が沈むときにはLife Raftの浮力で切れるぐらいの弱さでなければならないのです。

もし、「Weak Link」が強すぎた場合、折角展張したLife Raftも船と共に海中へ深く沈んで行ってしまいます。皆さんも一度、自分の乗船している船の「Weak Link」及び自動離脱装置をよく観察して、その仕組みを理解して下さい。

作動索といえば、以前乗船した船で、自己発煙信号の「作動索」と「固定索」がちぎれていたり、外れていたりした船がありました。皆さんの船の自己発煙信号は大丈夫でしょうか?「作動索」は自己発煙信号本体が引っ張られてオレンジ色の煙を発するための索です。そして、「固定索」は自己発煙信号と救命浮環を結んでいる索です。折角の救命装置も作動索と固定索がしっかり結ばれていないとただの重い缶です。

普段、何気なく船橋ウィングの救命浮環や自己発煙信号を目にしていますが、点検するために見なければ意外と作動索や固定索に目が行かないものです。また、ある船でSIRE受検時に検査員より固定索の長さが1mでは短すぎるとの指摘を受けました。固定索の長さが短すぎるとオレンジ色の発煙が救命浮環にすがり付いている人に近すぎるという理由です。そのため各船の固定索の長さは3m程度が適当です。

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