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トラブルが発生したとき、自分で何ができますか?

ここから数週間の共通テーマは、「トラブル防止のために何をすべきか?トラブル発生時に何をすべきか?」です。皆さんの仕事に少しでも参考になればという思いから、数週にわたって舷梯や係船索でよく発生するトラブル話を紹介していきます。

船では実害・実損が発生しないごく些細なヒューマンエラーや経年劣化による軽微な機器故障から、莫大な損害・損失費用が発生する重大海難事故、海洋環境を著しく破壊する流出油事故や死傷者が発生する悲惨な人身事故まで大小様々な規模のトラブルが昼夜を問わず発生しており、これからも皆さんが乗船中に間違いなく船上で発生します。それが私達の働く現場なのです。

トラブルが起こらなければ、航海士は航海当直・荷役当直や毎日のルーティーンワークを実施するだけで自分の職務に達成感や満足感を得て、自分の職責を十分に果たしていると考えます。さらなる向上心が無くなり、地道な努力もすっかり忘れて船上での日々を過ごしてしまうかも知れません。そして、目の前のルーティーンワークをこなしただけで自分は一人前になったと勘違いをして、自己満足してしまうかも知れません。

しかし、航海士が船上のプロフェッショナルとしてその真価を問われるのは、「トラブルを如何に未然に防ぐことができるか」であり、さらに不幸にもトラブルが発生したときに、「発生したトラブルに如何に適切に対応して、その被害を最小限に抑えることができるか」なのです。

理想を言えば、船内のトラブルが発生する要因を全て排除してトラブルを完全に無くすことが私達の使命であり、最終目標です。しかし、皆さんもよく知っているようにトラブルを未然に防ぐことは決して容易ではありません。乗組員は一丸となってトラブル根絶を目指して日々努力していますが、船上でのトラブルは決してゼロにはならず、必ず発生します。しかし、必ず発生するからと最初からあきらめてはいけません。自分でできること、航海士としてやるべきことを根気強く、着実に実施することによりリスクを最小限にすること以外に私達のやるべきこと、進むべき道はありません。

残念ながら多くのトラブルは発生してから、船上にいる私達乗組員が主体となって懸命に事後対応をしているのが現実です。だからこそ、あらゆるトラブルを想定内に留め、取るべき最善策を迅速かつ的確に実施できるよう日頃から準備しておき、実際にトラブルが発生した時に速やかに適切な対応策を講じるのです。

それでは、次週から船上で発生するトラブル事例の中から舷梯や係船索に着目して、甲板・貨物・航海の関連機器の不安全状態やヒューマンエラーにつながる不安全な行為・不安全な状況について考えながら、航海士として取るべき予防策や事故発生後の対処方法について整理してみましょう。

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