私達航海士は技能習得のために様々な訓練を受ける必要があります。ここではその『訓練という言葉の意味』について考えてみます。
まず、「訓練」を意味する英語は何種類かありますが、その定義について整理します。英語の「Exercise」、「Drill」、「Training」、「Practice」の4つの単語を辞書で引きますと、どれにも「訓練」という意味が含まれています。皆さんはこれら4つの単語を使い分けていますか?それとも区別せずに使っていますか?それぞれの単語を見てみますと、以下のように異なる意味が含まれています。
Exercise
習得した技能をみがく訓練、軍隊の演習等の訓練。技能習得前の訓練を意味する「Practice」に対して技能習得後の訓練を「Exercise」と呼びます。軍事演習などではこの「Exercise」を多く用います。したがって、技能を習得しようとする初心者は「Practice」を行い、技能をさらに向上させたい熟練者は「Exercise」を行います。
Practice
技能習得のための訓練、理論に対する実地の訓練。例えば、理論「Theory」に対して実践という意味を含んだ訓練の場合は「Practice」を用います。イメージやシミュレーションではない実際の訓練です。上述のように、初心者が技能を習得することも「Practice」です。
Drill
軍隊等の徹底的に繰り返し行う訓練、集団的な訓練。例えば「計算ドリル」というようにDrillには繰り返し行うという意味を含んでいます。 乗組員が船上で毎月のように行う操練は繰り返し行うという意味で、まさに「Drill」に該当します。
Training
教育という意味での訓練。教える人、教えられる人を意識した場合の「訓練」というときには「Training」を用います。「On the Job Training (OJT)」「Computer Based Training(CBT)」というときには、教育の概念が多分に含まれています。
4種類の「訓練」、それぞれの違いを理解しましたか?わかったようでわかりづらい「訓練」という言葉の定義です。ちなみに、和英辞典で「訓練」を調べると、ExerciseやPractice以外に、さらに「Discipline」、「Schooling」という単語にも「訓練」という意味があります。
以上で述べた説明では「Drill」が反復訓練で「Exercise」が技能習得後訓練ですが、SSP(Ship Security Plan)に記載されている「Drill」と「Exercise」には別の相違点があります。保安記録上、はっきりとその違いを理解して使い分ける必要があります。「Drill」と言えば日本語で「操練」と訳されており、Exerciseは「演習」と訳されています。簡単に定義すれば、「Drill」は乗組員だけで行う訓練であり、「Exercise」は船と陸上関係者が合同で行う訓練のことです。単独訓練が「Drill」であり、合同演習が「Exercise」です。この区別はあくまでSSP上での定義ですが、Securityに関わる記録等では明確に区別しておかなければいけません。