溶接
船で使われている溶接には、どんな種類があるのでしょうか? 世の中には様々な溶接方法がありますが、船の溶接のほとんどが「アーク溶接」又は「ろう付け」です。その他にも「Tig溶接」、「クラッド溶接」という名前を覚えておけば良いでしょう。当たり前ですが、溶接とは溶かして接合することです。最もポピュラーな溶接が「アーク溶接」で、皆さんもEngine Work Shopで機関部がお面を着けて青白い光を発して溶接作業を行っているのを見たことがあるはずです。
アーク溶接は雷のような放電により電極を高温にして、くっつけたい金属(母材)自身を溶かして、そこへ溶接棒内部の金属を溶かし込んで接続する方法です。アーク溶接の火花を直接肉眼で見てはいけません。サングラスが必要です。肉眼で溶接の火花を見ても、その時はなんともありません。しかし、翌日目が覚めると、目が真っ赤に充血して大変なことになっています。それだけアーク溶接の火は強力です。
「ろう付け」ですが、皆さんにも馴染みのある「はんだ付け」も「ろう付け」の一種です。船では銅管の溶接で用いられ、アーク溶接が母材を溶かすのに対して、ろう付けでは母材を溶かしません。そのため強度はアーク溶接より劣ります。その他の溶接方法として「TIG溶接」があります。TIGとはTungsten Inert Gasの頭文字です。
一般のアーク溶接では溶接棒自身が電極になり溶けて接合しますが、TIG溶接ではTungstenが電極となり、別の溶接棒を溶かして接合します。アーク溶接では空気中の水分により水素が溶接部分に入り込んで弱くなることがあります。その水分混入を防止するためにInert Gasを使用したTIG溶接のほうが信頼性が高いのです。そのためTIG溶接は重要な部材やステンレス等特殊金属の溶接に利用されます。その他の溶接方法としてLNG船のアルミニウム合金製のカーゴタンクと鉄製の支持部(Skirt)を接合するために用いる「クラッド溶接(爆発溶接)」という特殊な溶接方法があります。
Back Fire
英語の「バックファイヤー(Back Fire)」、日本語では「逆火」と言います。昔、ハリウッド映画にもなったと思いますが、ボイラー炉内の燃焼ガスがボイラー内で爆発することです。バックファイヤーはボイラーが壊れるだけでなく、下手すれば人命も失われる可能性のある大事故です。なぜ、爆発するかというと、着火失敗や失火等によって燃料が気化して炉内の高温な場所に多量のガスとして残っている状態となったところに、機関士が誤ってボイラーを点火するからです。
ボイラーの火が消えてしまうと燃焼装置から炉内に燃料が多少なりとも漏洩してしまいます。その漏洩した燃料が気化して炉内に充満した状態で再点火するときに大爆発するのです。これを防止するためには十分なパージ(Purge)が必要です。パージによって炉内の危険なガスを安全な空気に置換します。通常、ボイラーはPre-purgeを実施して炉内のガスを追い払った後でないと点火、再点火できないようになっています。また、失火後は自動的にPre-purgeするよう安全な仕組みになっています。