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エンジン・ア・ラ・カルト(その12)

ベアリング

回転軸を有する船舶機器の多くにベアリング(軸受け)が使用されています。ベアリングの代表的なものはボールベアリング(Ball Bearing)です。モーター類の軸受けに使用されているものは大小様々な形のものがあります。規格としては6000番、6200番、6300番がありますが、その違いは内径や厚さです。そして「6200」番の後に「Z」が付かなければ、両側がOpen Typeのベアリングで、6200Zと「Z」が一つ付けば片側がシール、もう片側がOpen Typeのベアリングです。

さらに6200ZZと「Z」が二つ付けば、両側がシールされたベアリングで、それぞれ用途によって使い分けています。また、「Ball Bearing」と異なる構造をした軸受けとして「Roller Bearing」があります。Taper型のRoller Bearingは形状が斜めになっており、半径方向の力だけでなく、軸方向の力(スラスト力)も支えることが可能です。甲板機器では「Air Capstan」の軸受けには「Taper Roller Bearing」が使用されています。

Low-sulfur

記載内容は執筆当時のものです。最新の情報をご確認ください。

最近は海洋環境保護のために船舶で使用する燃料の硫黄分を可能な限り少なくすることが求められています。3.5%以上の硫黄分を含む燃料は基本的に使用できません。もし補油する油の硫黄分が3.5%以上であれば、船側はBunker Supplier側に対して受け取りを拒否します。さらにバルチック海等の特別海域では硫黄分が1.5%以下の燃料しか使用できないため、硫黄分1.0%以下の燃料を積込んで使用することになります。

低硫黄分の燃料は環境には非常に良いのかも知れませんが、船の機関部にとっては余計な仕事がたくさん発生するやっかいな燃料です。低硫黄分の燃料は粘度が低すぎ、かつ、酸性が弱いので様々な不都合を生じます。硫黄分が少ないために粘度がさらさらすぎて通常使用しているFOポンプが壊れてしまう可能性があるため、低硫黄分のFO専用ポンプを利用する必要があります。

また、ディーゼル機関では、通常のFOは酸性なのでCylinder Oilはそれを中和させるためにある程度アルカリ性にしてあるのですが、低硫黄分燃料は酸性が弱いため、Cylinder Oilも専用のものに変更する必要があります。このように通常の燃料から低硫黄燃料に変更するとその準備が大変です。環境には悪い硫黄分ですが、それが少な過ぎると機関部作業に負担が多くかかることになります。

焼き入れ、焼きなまし

金属を火で熱して急激に冷やすと、分子・原子レベルでその並び方が変化して固くなります。これを「焼き入れ」といいます。さらに焼き入れした金属を火で熱した後にゆっくり冷やすと金属は柔らかくなります。これを「焼きなまし」と言います。火を使うと言えば、機関部では、シートリングやベアリングの挿入や取り外しが硬くて難いとき、膨張させるために火で温めます。すると窮屈だったシートリングやベアリングもすっぽりと簡単に挿入・取り外しができるようになります。また、古くて錆びて固着したボルトや回転部分はスパナーやハンマーを使っても歯が立ちません。そんなときにはボルトや回転部分を火であぶると驚くぐらい柔らかくなり、簡単に回るようになります。

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