多くの船で船橋に掲示しているお馴染の国際パイロット協会発行のパンフレットに重要な注意事項が記載されていますが、これらの注意事項を最低限度は順守する必要があります。
例えば、
- 最下段のループや揚収索はパイロットボートにからまるとパイロットに危険が及ぶ。揚収索を取り付ける場合は最下段のスプレッダーステップ又はその上方のスプレッダーステップの船首側に固縛する。
- 下端プラットフォームは水平位置でしっかり固定する。
- サイド・ロープは繋いだものではなく、途中にシャックル・結び目・スプライス等で繋いだものではなく、一本のロープを使用する。
- ステップは等間隔とする。
- すべてのステップは船側に密接させる。
- Accommodation Ladderの最大傾斜角度は45度。
- Man Ropeは結び目のないもので、直径28㎜以上32㎜以下。
- 各ステップは水平にし、ステップ固定ピースを用いたシージングにより固定。
- 自己点火灯を連結した救命浮環を準備する。
出港後の後片付け作業でパイロットラダーをキャンバスカバーで覆うことは、直射日光(紫外線)や雨水を避けてロープ類の劣化を防止するために必要な作業です。
パイロットラダーをあらためて点検する機会が普段は少ないので、入港準備で降下しているときや格納しているときにロープ、ステップ、スプレッダー等の状態を端から端まで丁寧に目視点検すべきです。また、パイロットラダーにエアーモーターを使用している場合は、舷梯同様にドレンフィルターや注油器の適切な運用が重要となります。
舷梯やパイロットラダーの準備・収納作業は舷外作業を含む危険な作業です。そのため適切な作業環境を提供するためには甲板照明の確保も非常に重要です。あなたは必要なときに必要な場所を照らすライトのスイッチ類の場所を把握していますか?必要な照明を何時でも直ぐに点灯・消灯させることができますか?
過去に経験した珍しいトラブルを紹介しましょう。ある船で内海パイロットを乗せて出港した後、ボースングループが次のBay Pilot乗船用に右舷コンビネーションラダーを海面上1mに準備しました。そして、いざ大阪ベイパイロットが乗船するためにパイロットボートが近づいてくると、パイロットボート作業員からもっとパイロットラダーを引き揚げるようクレームがありました。何故かな?と良く見るとパイロットラダーが海面に浸かっているではありませんか。これは非常に危険な状態です。
甲板部の準備ミスかと思いましたが、よく考えると別の原因がありました。当時、大阪湾から太平洋に出た後、台風が接近するためC/Oがバラストの増し張り作業をしていたのです。恐らくパイロットラダーを用意しているときは、やや左舷側に傾いでおり、パイロット乗船時にはUprightになっていたのでしょう。さらに中央喫水もパイロトラダー準備中と比べて50㎝は深くなったはずです。バラスト増し張り作業の結果、喫水が深くなることによりパイロットラダー端が水没していたのです。パイロットを迎える航海士やボースンはパイロットボートが近づく前にパイロットラダーの状態を目視で再確認すべきでした。思わぬところに危険が潜んでいるという一例です。