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もしも、係船索が切れたら(その2)

係船作業では挟まれ事故も多く発生しています。ウィンチドラム付近に手や足を置いているときに他者がウィンチを動かし、回転部分に手や足が挟まれる事故です。特に係留作業で陸上作業員との連携が不十分で発生する事故にも要注意です。

チームワークの悪さ、コミュニケーション不足、意思疎通が出来ない状態等々によりニアミスが発生し、最悪の結果として人身事故につながるケースもあります。例えば、係留索が陸上フックにかかり、ラインのたるみを取り、張るときに、陸上作業員がまだ陸上フック付近で作業を行っているにもかかわらず、係留索を巻き込み、陸上作業員が係船索に巻き込まれたり、切断した係留索に激突する事故が考えられます。事故防止対策のいくつかを以下に列挙します。

(1) 適切な手信号・笛信号を使用する。
(2) 自分の立ち位置に注意する。
(3) 作業中に係船索をまたがない、下を通らない。
(4) 陸上作業員がクリアーになってからウィンチで巻き込む。
(作業員からの旗信号の合図が出てから巻き込む。)
(5) 係船索は適度な速度で送り出す。緩ませすぎない。
(6) フックオン後はゆっくり巻く。レッコーされたら出来る限り早く巻く。

準備作業で使用するチョックを間違い、隣のチョックに係留索を通してしまうことがあります。例えば、LNG船が新潟へ入港して荒天が予想される場合、陸上から増し索を船首尾に取ります。その際、増し索用のチョックを開けておく必要がありますが、うっかりいつも通りに係留索を取ってしまうと、増し索を取れないようになります。

係留索のシャックルにも要注意です。テールロープを接続するシャックルの向きが逆になっていることに気づかずに係留作業を続けてはいけません。シャックルの向きが適正でないとシャックル強度が低下して破損する可能性があります。

クラッチレバーのセットピンはクラッチのOn/Off操作の後に必ず入れる習慣をつけましょう。セットピンが入っていないと、クラッチが意図せずに突然On/Offとなり、ウィンチの誤作動を招き、係留索の損傷や人身事故につながる可能性があります。作業中のみならず、係船作業が終わったら後も、クラッチレバーのピンがセットされていること、リモコンのコントロールレバーにストッパーがかかっていることを確認します。これらは誤作動防止のために重要な確認作業ですので、体が自然に動くぐらいのルーティンワークにしましょう。

タグラインに大きな荷重がかかり、SWL 5トンしかないスタンドローラーがひん曲がって甲板にぽっかり穴が開いた事故は、まさにデッキ構造物の強度についての認識不足やうっかりが招いた事故です。SWLやMBLの意味を理解し、タグの力とSWLの関係を理解している必要があります。タグの力が5トン以上なのか、以下なのかを咄嗟に判断ができることが航海士に求められる技量です。5トンのカーゴを自船のクレーンで吊り上げてよいのかどうか、それを理解して作業に従事するのが航海士です。

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