係留作業中に絶対にしてはいけないこと

事故が絶えることのない危険な『係留作業』の話です。

「Mooring Wire」と「Tail Rope」と「Winch Brake」各々の強度の関係(大小)を説明できますか?最も力の弱いのはWinch Brakeです。そして次にMooring Wire、最後にTail Ropeの順番です。数字で言うと、Mooring Wireの強度を100%とすると、Winchのブレーキ力は60%、Tail Ropeの強度は125%です。意外とWinchのブレーキ力が小さく、Tail Ropeの約半分です。

なぜブレーキ力が最も小さいように設計されているかというと、Mooring WireやTail Ropeが切断される前にWinch Brakeが緩むようにしているからです。危険物船における係船索の適切な使用方法については、通称「メグ(MEG)」と呼ばれるOCIMFが発行している「Mooring Equipment Guidelines」で詳細に説明されています。

正常ならばMooring Wireが切れる前にWinch Brakeが緩むはずですが、発錆や経年劣化によりMooring Wireの強度が低下し、過度の動的な力によりBrakeが緩む前にWireが切断することが多々あります。また、係留中の船体動揺によりTail Ropeに繰り返し応力が働き、内部に熱を持ち、Tail Ropeが切断に至ることもあります。

Tail Ropeは繰り返し応力(張ったり、緩んだりの繰り返し)に弱いことを頭に入れておいて下さい。非常に大きな荷重に耐え、かつ伸びが少ないことが係船索の必要条件です。したがって、多くのMooring WireはIWRC (Independent Wire Rope Core)を使っています。これはロープ芯として繊維芯ではなく、Wire Ropeを入れたもので、従来のWireに比べて丈夫で、大きな荷重や外圧で使用する係船索に適したWireです。

決して無くなることがない大事故の一つとして係留索の切断による人身事故があります。切断された係留索が跳ねて乗組員や陸上作業員を直撃して死傷者が発生する事故です。切断されたWireやRopeが人に当たれば、ただでは済まされません。大きな鉄の塊が猛烈なスピードで人に衝突するようなものです。ときには即死に至ることもあります。過去には、外地の係留作業中にMooring Wireが切れて若い甲板手の腰の辺りを直撃し、即死したという事故が発生しています。

係留作業中に船側も陸側も係留索は切れるものであるとの前提で、切れたときのことを想定して常に安全な立ち位置を考えながら作業をしていれば、人身事故は起きないはずです。係留索が切れて跳ね返ってきても直撃されない場所にいれば良いのです。そうすれば係留索の切断というトラブルだけで済みます。係留作業中は自分の立ち位置に常に気を配っておくべきです。

係留作業は陸上側と船側の協力作業です。係留作業中に船側が絶対にしてはいけないことがあります。それは陸上フックに係留索を取った後、まだフック付近に陸上作業員がいるのにもかかわらず、係留索にテンションをかけることです。もし、係留索が切れて陸上作業員に当たれば大事故となります。陸上作業員がクリアーになってから係留索を巻き込むのは航海士の常識です。

船上の作業にしか注意が行き届かず、陸上作業員がクリアーになっていないのに係留索をピンと張ってしまう航海士をときどき見かけます。これを絶対にしてはいけません。過去にピンと張った係船索が切れて、陸上作業員が死亡する事故も発生しています。担当航海士は本船側乗組員の命だけでなく、陸上作業員の命も守っていることをしっかり頭に入れておいて下さい。

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