あえて言うならば、係留索の中ではブレスト“命”

Windlassや救命艇と並び、事故・トラブルの多い『係留索』の話です。

皆さんは、「係留索(流し、ブレスト、スプリング)の中で最も重要な係留索はどれか?」と聞かれてどう答えますか?私の答えは「Breast Line」です。

もちろん、どの係留索も重要です。しかし、その中でも最も重要な係留索はBreast Lineで「ブレスト命」となります。船体が潮流や風の力の影響を最も大きく受けるのは正横方向からの風潮流です。縦方向に比較して横方向からの風潮流の受圧面積が大きいため、その作用する力は縦方向に比べて圧倒的に大きくなります。その力に対抗する重要な役割を担っている係船索がBreast Lineなのです。他係船索も横方向の張力を分力として受け持っていますが、やはり可能な限り直角方向に取っているBreast Lineが最大の功労者です。

昔、豪州において満船状態の鉱石船が桟橋横方向からの強潮流により桟橋から離れてしまい、流されて最後には浅瀬へ乗り揚げるという大事故が発生しました。満船で喫水が深くなり、UKCが極端に小さくなって、潮流圧が著しく増大しました。

ところが、本船のBreast Lineをしっかり巻き締めていなかったため、係留索がその圧流に耐えられなくなり起こった事故です。陸側方向からの強風・強潮流下で係船している場合、「Breast Lineが命」です。Breast Lineをしっかり巻き締めて、ウィンチのブレーキ力を所定の力でキープしておく必要があります。

皆さんは風圧力の概算値を直ぐに計算することができますか?自分が乗っている船のおおよその風圧力の算出方法は是非覚えておいて下さい。自動車船やLNG船などの船型では風圧力が最大となるのは、風をほぼ正横から受けた場合です。そのときの風圧力は以下の式で計算できます。

風圧力 F= 1/2 × ρ × Ca × B × V2

ρ: 空気の比重=0.125
Ca: 係数で概ね1.2(船種によっては1.8)
B: 側面受風面積(m2
(正確にはA×cos2θ+B×sin2θ, A:正面受風面積)
V: 風速 (m/s)

例えば受風面積5,000m2の自動車船が真横から12m/sの風を受けた場合、1/2 × 0.125 × 1.2 × 5,000 × 122 = 54,000 kgf = 54 トンとなります。一方、タグボートの推力は1000馬力当たり約13トンなので、タグボート2隻でこの風に対抗して着岸するには2隻が各々2100馬力以上の力で押す必要があることが判ります。このように風圧力の計算式を頭に入れておけば、どれぐらいの風でどの程度の風圧力が船体に働き、どれぐらいのタグボートの馬力が必要であるかが把握できます。

例えば、航行中に正面から風速10m/secの風を受けると船首正面の投影面積が1,500m3もある自動車船やLNG船では、11トンの風圧力を受けていることになり、20m/secにもなると45トンの巨大な力を受けていることになります。丁度3500馬力のタグボートが一隻ぶら下がってFull Asternに引いているぐらいの抵抗になるということを頭に入れておいて下さい。

MEMO
風圧力についての詳細は以下の文献の第3章 操船に及ぼす外力の影響をご参照ください。

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