私達が船で毎日のように使用する船用品の話です。
船には数えきれないほど多くの道具や消耗品が使用されています。3/Oは船用品を担当しているので、3/Oを長くやればやるほど、船用品の種類、用途、使用頻度等についての知識や経験が増えていきます。甲板部の船用品ストアー内を見渡すと船ならではの船用品が沢山あるはずです。例えば、鳩目(グローメット)、ホースバンド、割りピン、グリースニップル、バタフライナット・ボルト、Uボルト、デブコン、ガムテープ、シールテープ、エミリークロス、スクイーザー、ジェットチゼルのニードル、ワイヤーカップブラシ、シリコンシーラー、ディスクサンダーのディスク、南京錠(Pad Lock)、シャックル、マーレン、ペイント刷毛、トイレのフラッシュバルブ、ドアクローザー、ヒンジ(蝶番・ちょうつがい)等々。
甲板部から注文依頼を受けて、そのままの品名、数量を鵜呑みにして申請書(注文書)を作成してはいけません。俗称で注文しているかもしれません。あるいは、IMPA Code番号が間違っているかも知れません。普段の何倍ものとんでもない量を注文しているかも知れません。ときどき単位間違いをして、その船の一生分以上ではないかという船用品の在庫を見かけます。甲板部が持って来る船用品申請のリストには間違いがあるという前提でダブルチェックするつもりで注文しましょう。
船で早く覚える必要があるのは道具の名前だけではありません。ある新入社員の人達と一緒に乗船していたときの話です。彼ら新人の人達に船の基本について様々なことを教えてあげようとするのですが、ときには私達が何気なく使っている言葉・用語が彼ら新人にはまったく通じません、理解できません。「え!こんな言葉も知らないの?」「一般常識として使っている言葉ではないの!」「陸上生活では使っていなかったの?」そんな言葉が私達の船内にはたくさん溢れているのです。知らず知らずに船乗り用語が身に付いており、いかに船乗りは船員独特の専門英語や船乗り用語を沢山使っているのだろうかとつくづく実感させられます。
例えば、ハンチングする、だましだまし・・・する。ラチェットスパナ、トルクレンチ、パージ、ドレン、ワイヤー振り替え等々。私達が何気なく使用している言葉には、陸上の人が聞いたことがない言葉が非常に多く含まれているのです。パージやドレンという英語を陸上で普通に生活していると、馴染みのない英語かも知れません。ハンチングも普段は使わない英語でしょう。チェーンブロックも工場で働いていない人にとってはご縁がないものでしょう。そして、英語や単語だけでなく、船内での略号の多さも半端ではありません。新入社員に何かを教えるときに略号を使うと、殆んど理解不能です。船内には船員用語や略号があふれています。