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ちょっと待て、サービスエンジニアを呼ぶ前に何をした?

故障した機器を修理するときに『航海士が取るべき対応』の話です。

航海計器や荷役機器は甲板部にとって非常に重要な機器です。OPM上のいわゆる重要機器(Essential Machinery & Equipment)に指定されているものもあります。長い乗船期間中には、これらの機器のトラブル発生を一つや二つは経験するものです。

航海中にトラブルが発生した場合、状況・原因を調査し、本船で簡単に修理できない場合には、メーカーから不具合場所の特定方法や修理方法の指示・アドバイスを受けて調査・修理を試みます。それでも直らない場合は港でメーカー訪船による修理となります。それでも、修理できない場合は、ドックで本格的な修理や根本的対策を実施します。

昔、タンカーでの経験ですが、ある日突然ドップラーログの表示がおかしくなるというトラブルが発生しました。当時、その船が揚地入港数日前で忙しかったこともあり、担当航海士は原因や状況を十分に調べずに直ぐに会社の担当者に業者修理を依頼しました。そして次の内地でサービスエンジニアが手配されました。港に到着して訪船したサービスエンジニアによる修理が始まりましたが、15分もしないうちにサービスエンジニアから作業終了の報告がありました。

「Box内のヒューズが切れていただけでしたので、交換しておきました。」

このとき船長及び各航海士は唖然としました。ヒューズ切れ一つで十万円以上も費用がかかる業者手配をしてしまったのです。あとの祭りですが、トラブルが発生して電源Box内をのぞきもせずに修理業者を手配したのは明らかに間違いです。やはり機器トラブルが発生した場合、結果的に自分達で修理できなくても本船で取り得る最低限の状況把握や原因調査を行わなければいけません。それが航海士の役割の一つです。

皆さんは船でテスターを使ったことがあるでしょうか?電気関係の故障はエンジニア担当だからと、すべて機関部にお任せでは駄目です。ヒューズ切れぐらいはテスターを使って自分で確認できなければいけません。ヒューズ切れ、ランプ切れ、結線端子の緩み、基板の焼き付き程度は航海士といえども確認できるチェック項目であり、実際に確認すべきです。

例えばテスターを使って直流電圧・交流電圧を計測する以外にも抵抗値を計測して、その導通があるかないかでヒューズが切れているかどうか、断線しているかどうかがわかります。もちろん、ヒューズの両端にテスターを当てて、針が振れた場合には導通があることがわかりヒューズは正常です。テスターの針が∞のままでピクリとも動かない場合は導通がないことを意味し、ヒューズは断線していることが判ります。

もう一つ失敗例を紹介します。機関部の機器が壊れたと判断してサービスエンジニアを港に呼んだけれども実際は故障ではなく、サービスエンジニアは必要なかったという失敗です。あるとき機関部で清浄機の掃除作業を行いました。いわゆる「皿洗い」です。開放掃除を終了し、清浄機を組み立てて作動テストを実施しましたが、上手く作動しません。何度も開放点検と作動テストを繰り返しますが正常に作動しません。

仕方なく、次の港でサービスエンジニアを手配しました。訪船したサービスエンジニアは直ぐに不具合を発見しました。それはたった1箇所の“Oリング”のサイズ間違いでした。規格以外の太さのOリングを入れていたために清浄機が上手く作動しなかっただけでした。このときの担当機関士は、さぞ恥ずかしかったでしょうし、面目無かったと思います。

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