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関所を通るときの通行手形のような書類 その1「COU / Nil List」

航海士には普段、あまり馴染みのない『入港関連書類』の話です。

航海士なら多くの入港書類を実際に目にすることがあると思いますが、COU (Condition of Use) という書類を知っていますか? ある特定のターミナルに入港するときに使用する書類ですが、船長になるとこの書類に嫌でも神経を使うようになります。パイロットが乗船した後、船長に対してこのCOUにサインするよう求めます。もし、船長がサインを拒否すればパイロットは本船の入港を拒否します。

但し、COUへのサインを求めない港・ターミナルもたくさんあります。COUを日本語に直訳すれば「使用条件」ですが、書かれている内容は簡単に言うと、「貴船に港内施設の使用を許可します。しかし、船側の故障や過失による事故により港湾施設に損害を被った場合は、船主側が全ての責任を取って下さい。」という内容です。これに船長が同意しないと、入港できません。ひとたび入港・着岸時に大きな事故が発生して港湾施設が損傷したり、油が流出したりすると莫大な修理費用が発生します。従って、陸側としては船側の責任を明確にさせる手段としてCOUを船に提示して、本船側責任者である船長のサインを取り付けるのです。

時には船主側が一方的に不利益となる内容が記載されていることもあり、本社の営業担当者がその内容に注目しています。しかし、入港時のパイロットが乗船して着桟目前の多忙を極めるときに数ページにもわたって細かい英文で記述されたCOUの内容を精査してパイロットと交渉する時間的余裕はありません。船長はパイロットに要求されるがままサインせざるを得ません。初めての港(ターミナル)へ入港する場合、その港(ターミナル)のCOUの内容に問題があるかどうかを陸上担当者が本船入港前に事前に確認しておくべきです。そして、船主側が不利にならないようにP&I保険で補填できる内容となっていることを確認して、なっていなければターミナル側と交渉して本船側のリスク・責任を軽減する対策を講じておくべきです。

入港時に取り扱う書類でCOU以外にも皆さんにあまり馴染みがない書類があるのではないでしょうか。例えば「Nil List」という書類を知っていますか?港によっては、作成して官憲への提出が必要です。どんな書類かというと、「本船は武器(Arms)、弾薬(Ammunitions)、麻薬(Narcotics)等の危険物や動物(Animal)等を積んでいません。」ということを宣言するための書類です。これらの品目を全て「Nil」と記載して提出します。港によっては税関職員から口頭で「船上にペットはいますか?」「乗客はいますか?」「武器は積んでいますか?」「密航者はいませんか?」と質問されて、船長が「No」と返事をして済ませることもあります。また、国・港によっては「Currency List」の提出を求めるところもあります。日本語で言うと「通貨リスト」です。船内で所持する船用金の総額を記載して税関に申請します。国によっては外貨の持ち出し、持ち込みを厳しく制限している国があり、不当な外貨の流入・流出を監視・制限するためにCurrency Listの提出が要求されます。

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