NEW! 記事の「お気に入り登録」機能を追加

人間が海中転落したときに海面との衝突で致命傷を負うか否かの限界

船体サイドに表示されている紅白の「パイロットマーク」の話です。皆さんは日本水先人会連合会が発行している「水先人用乗下船設備及びその運用」(PILOT TRANSFER ARRANGEMENTS AND THEIR OPERATIONS)に目を通したことがありますか?まだ読んでいないのなら、必ず一読してください。私も大昔に読んだきりで、この間、久し振りに読みなおしてみると、認識をあらたにすることがたくさん書かれていました。

参考 水先人用乗下船設備及びその運用日本水先人会連合会

まず、私達航海士が認識すべきことは、パイロット乗下船時の事故が想像以上に多いということです。過去10年(2002年から2011年)の間に日本水先人会連合会(旧日本パイロット協会)に報告のあったパイロットの死傷事故は約30件です。年平均で3件ぐらい発生しています。その中には死亡事故も数件あります。発生頻度が高い事故として梯子のずり落ちによる転落があります。その原因は単純なミスによるもので、梯子に遊びがあったり、固縛が完全でなかったりです。Pilot Ladder / Accommodation Ladderの構造的欠陥が原因であることも多いようです。もちろん、日本人パイロットの平均年齢が相当高いというのも一因ではあると思いますが・・・

乾舷が9mを超える場合は、舷梯とパイロットラダーの両方を組み合わせたコンビネーションが必要です。このことは常識的に誰もが知るところですが、ではなぜ乾舷が9m超の場合にコンビネーションが必要なのでしょうか?実は人間が海中転落したときに海面との衝突で致命傷を負うか否かの高さの限界値が高さ9mなのです。パイロットがラダーから落下することも想定内なのです。しかし、この数値はかなり古い実験結果であり、最近のデータでは高さ5mが限界という実験結果もあります。

どの船も白色と赤色のいわゆる「パイロットマーク」で乾舷高さ9mを表示しているはずです。正確に言うと、「水面から船舶への出入りのための位置までの距離」が9mとなるのが、パイロットマークの白色と赤色の境界線です。このマークはIMPA(国際パイロット協会)の勧告で決められています。

参考 水先人用乗下船設備の要件国際パイロット協会

パイロットの要求に従ってコンビネーションラダーにせず舷梯のみを準備・使用することも時々ありますが、万が一、人身事故が発生したときの責任の所在を明確にするために、「誰の指示によりコンビネーションラダーを準備せずに舷梯のみを使用したか」を明らかにしておく必要があります。言い換えれば、船側が勝手な判断で舷梯のみの使用と決めないことです。必ず、パイロット側の要請があってから舷梯のみの使用とすることです。

船体にパイロットマーク以外に「タグマーク」を表示している船もあります。タグボートが押す位置を明確にするためです。タグボートが船体のどこを押しても良いわけではありません。馬力の強いタグボートで船体を押し付けると、船体外板に曲損が発生する可能性があります。実際にタグボートが原因で外板が凸凹に曲がっている船があります。タグボートのラフな操船によるものかも知れません。40、50トンの大きな力で船体外板を押すと案外、簡単に凹んでしまうものです。

凹損を防止するためにはタグボートに押されて生じる応力を分散させる必要があり、横強度材 (Transverse Strength Member) であるWeb Frameで補強するか、Bulkheadの部分をタグボートに押してもらうようにします。そのために船によってはタグマークを船体に明確に表示しているのです。逆に言えばタグマーク以外の縦強度材 (Longitudinal Strength Member) だけの箇所をタグボートに押されてはいけません。しかし、実際の現場ではタグボートがタグマーク以外の船体外板を押すことが結構多いのも現実です。

注意
データは執筆当時のものです。最新の情報はリンク先の各ページをご確認下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA