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手記 : タンカー漂流 知られざる危機

2019年12月13日(金)、NHK「シブ5時」【タンカー漂流 知られざる危機】この放映に関し、以下に当時の手記を紹介します。

2018年8月4日、東京湾入域寸前で30万DWTの原油満載VLCCが主機加給機焼損で漂流し始め、丁度、東京湾へと北上する台風13号の餌食となれば大災害かと案じた。VLCC経験のMaster Marinersは、この極めて危機状況に陥った厄介な巨大船の安全確保にゾクッとしたはずだ。タグ出動の要請に応じるも、港湾タグでは座礁の阻止が関の山で、台風を避航させるには沖合へ曳航できる航洋タグが必須と訴えた。幸い、やっと手配されたが、既に本船の運航関係者だけでは安全な事態収拾はできなかった。
海上保安庁が指揮命令権を執って民間の海事クラスターを駆使できる国家的な危機管理体制の必要性を痛感した。米国では、入港する原油タンカーの運航者に資力証明を提出させ、事故発生時には米当局が対応を指揮し、その費用は運航者に徹底負担させるシステムとなっている。日本は然に非ず、今回の危機も捉え方が甘いと感じた。

満載のVLCCが台風の進路上で漂流した映画のような場面だったが、天祐あって、航洋タグで南西へ向け八丈島西方へ曳航され台風もスライスしたので逃げおおせた。更に遡って考察すれば、本船船長は、入湾前の広い水域にて操縦・機関設備の正常確認や点検を十二分に管理していたのか。Master Marinersには、孫子の兵法の如く:戦わずして勝つ、未然に事故防止できる能力が求められる。

また、台風一過後、このVLCCをどうするか、選択肢は当初の京葉SBへ向けるのみとなり、後続の台風の合間を観て17日入湾、荷役は可能状態であり18日着桟して自力で揚荷完了、20日出湾した。この湾内往復は、Master Mariners の水先人会と曳航関係者が中心となって航行計画を練り海上保安庁と港長が認可し、航洋タグを中心に港湾タグ約10隻での花魁道中となった。湾外では、またもや台風19号、20号が遊弋しており、何処へ曳航するのか前途多難、25名の印度乗組員は苦労と心配の毎日に耐えて頑張るしかない!

この8月4日~20日の事件は殆ど一般報道されず、世間のニュースは行方不明の幼児保護と刑務所からの脱走、世界貿易摩擦が繰り返された。海洋国家?としての危機管理が甘いのか、意識が低いのか、隠蔽されたのか?

ご参考に、以下の弊著記事を読まれたい。

巨大船 ダイナミズム マスメリット

真夏のヒヤリとした出来事だったが、今後、地球温暖化が進行し気候変動も増大するだろうと、よく耳にするようになった。一方で、人類の神へのチョッカイが節度を超し【バベルの塔】の類となって生物破滅に繋がるかもしれず、よく吟味しながら日々暮らしたい。人類の未知への挑戦は、理性的であってこそ発展する!

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