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RightShip(ライトシップ)とは何か?

藤井 迪生
藤井 迪生

ここ最近、RightShipの名前を聞く機会が多くなりました。以前から漠然とバルクキャリアの検船のイメージはありましたが、これまで具体的にどのような仕組みで評価されているのかを理解できずにいました。
今回、RightShipの日本のキーアカウントマネージャーである山田優氏にその詳細を伺う機会を得ましたので、内容をシェアします。

(取材日: 2022年7月5日)

RightShipとは?

藤井:まず初めにRight Ship(ライトシップ)について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

はい。1988年から1991年にかけてバルクキャリアの事故が多発したことを受けて、資源メジャーである BHPとRio Tinto、後にCargillが出資して設立した会社がRightShipです。本社はオーストラリアで、現在はイギリス・シンガポール・アメリカに事務所が、日本と中国に駐在員が在籍しています。

かつてRightShipの目的は『サブスタンダード船の排除』だったとお聞きになったことがあるかと存じます。しかし、2021年からは新しいビジョン『海事災害ゼロ』を、その達成のためにミッション『海事産業の皆様のTrusted Innovation Partnerになる』を掲げ、「公平性・透明性」を目標とした新システム『Safety Score』がスタートしました。併せて同年よりスタッフを多く増員(私のような、海技者・船会社出身の方も多く在籍)する等、ここ2年で従来の組織とは大きく変わったという認識です。

事実、RightShipのメンバーシップは日本においてもここ一年で倍増し、船会社様を中心に60社以上。Vetting (詳細後述)についても、従来の資源メジャーによる依頼だけでなく多くの荷主・ターミナル・用船者様が利用され、現在は年間4万回実施、その内の40%はタンカーが対象です。独立した3rd partyとして海事産業の皆様と災害ゼロを目指す組織になるためには当然船会社様との取り組みが重要であり、海事クラスターが発展している日本において専門の人材を雇用することに繋がっているとの理解です。

藤井:具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?

RightShipの目的はMaritime Industry that causes Zero Harm – 海事災害ゼロですが、そのために個々の船、船舶管理会社にて発生したトラブルに基づいたベンチマークスコアを算出しています。どのようにすればトラブルが減少するかを船会社様と取り組み、実際にトラブルが相対的に少なければベンチマークスコアが上がるといった次第です。

また、それらのスコア及び船会社様から頂いた是正報告書・Class Report等に基づき、本船が安全運航に適していることを確認するVetting (ベッティング)も、依頼を受けた際に実施しています。その過程で、状況に応じて実際に検査官が訪船しての検船も実施しています。例えば、重大な事故・トラブルが発生した際に、船会社様から頂いた報告に加え、船上検査を以て再発防止策がImplement (履行) されているか等の確認、あるいは過去24か月以上PSC検査の実施がないためVettingにあたり本船が安全という確認をするために船上検査を実施しています。日本を拠点とする船会社様もRightShipメンバーとしてサービスを利用されており、普段から多数お問い合わせをいただいていますので、少しでもお役に立てるよう日々尽力しています。

私の主な業務内容としては、Vettingが通らず本船が商売にノミネーション(推薦)できないときの対応や、トラブル発生後のCloseout ReportがAcceptされないときの原因究明・再発防止策の策定、RightShip Inspectionの指摘に疑義がある場合の対応等、RightShipに関わるあらゆる案件に関してフォローアップをさせていただいています。

スコアリングする意味は?

藤井:運航者の立場からすると点数付けをされるのはあまり気持ちの良いものではありません。過去、(RightShipではないですが)検船で、指摘のための検査だと感じたことが何度かあります…

私も外航船社、船主・船舶管理会社にいた際、「誇りをもって安全運航に取り組んでいる」という自負をもって業務に励んでいましたので、「なぜ民間会社が勝手に評価をするんだ」という気持ちは重々分かります。

質問の「スコアリングをする意味」の回答としては、「災害ゼロを目指すため」という認識です。評価方法については後に詳細を説明させていただきますが、RightShipのスコアリングは「PSCによる指摘・拘留」「事故」といった発生した事実に基づき、それを他の全船舶・管理会社様と比較し算出、ベンチマークとして表示しているものになります。

トラブルが発生したら減点する方式ではなく、例えば「事故が発生しても、管理隻数と他社フリートと比べると発生数は少ない」といった相対的にみて良い結果のケースであれば、点数は上がる方向に作用します。よって、もしスコアが低ければそれは相対的にみてトラブルの発生度合が高いと判断されていれば、「ではどのような取り組みをすれば再発防止に繋がるか」といった内容を船会社様と協議させていただき、その結果、実際にトラブルが減った事実(=スコアの上昇)を以て、RightShipとして「本船は安全運航に適していると考えている」ことを示すといった形です。

重要なことを述べさせていただくと、事実そういった安全性を含む各種情報の見える化というニーズがあるためとは思いますが、そのニーズに甘えるつもりはありません。船会社様にとって、従来は無かったリスクや負荷がかかっていることは重々承知しています。船を所有、管理、運航することの大変さやリスクも身を以て存じております。一方で、RightShipはそのようなリスクを負うことなくこのような取り組みをしていることについても、常に考えるようにしています。だからこそ、ニーズがあってRigthShipがそれに応えようとするのならば、本船に一番精通している船会社様からの情報に基づき、船会社様をはじめとする海事産業の皆様に納得いただける評価をすべきと考えています。

併せて、こういった組織・取り組みが世界に既にあることは事実ですので、それをどのようにすれば日本海事産業の皆様のお役に立てるか、といったことを考えています。

また、ニーズについて具体的に述べさせていただくと、「自分たちの荷物を運ぶ船の安全性を知りたい」という従来のニーズはもちろんのこと、船主様目線では、「自分たちが購入を検討している船及び現在の管理会社の情報の確認」、「管理を外出ししている所有船の状況を常時把握」など。管理会社様でいえば、「自社情報・スコアがどのようになっているか確認し向上させ、ノミネーションに通るようにしたり、対外的なアピールに利用する」、「今後管理開始を検討している船舶の情報確認」などがあります。

一例をあげると、本船で発生した事故・指摘・拘留は、管理会社が変わったからといって無かったことになるわけではありません。ついては、重大・頻繁なトラブル等発生した船舶は、購入・管理移管後のVettingがAcceptとならずノミネーションができない可能性があります。そういったリスクを減らすためにも、船主・船舶管理会社様自身も、自社船と同様に他船を確認されるケースがあります。その他、全船会社 (船主・管理会社・用船者)及びIMO番号が付与されている全船舶の情報を確認できるので、日本においても多くの船会社様、他海事産業の皆様が利用されているという認識です。

余談ですが、私は船会社時代、RightShipを自分たちの利益に利用することを第一に考えていたので、対外的に「PSC検査の結果が良い」「事故の発生数が少ない」ことを証明する根拠としてRightShipのプラットフォーム情報を用いたり、社内目標の策定に有効活用していました。

Safety Scoreの算出方法

藤井:Safety Scoreを算出する際に利用している情報はどのように入手されているのでしょうか?

各種データベース、例えばIMO、ILO、PSC MOU、IHSMarkit、政府・裁判所関連等と連携しており、それらに載った情報は反映されます。メディアやPort Authority、その他海事産業からの情報もソースとなります。事故詳細は船舶管理会社様からの情報に基づき判断されます。

藤井:PSC MOUの情報について、PSCは地域によって指摘が異様に多かったり、理不尽な指摘があったりと、一律には測れないように思いますが…

おっしゃる通りPSCの結果には港によりバラツキがあります。ですので、PSCの結果をSafety Scoreに反映させるときには該当する港におけるdeficiencyの平均指摘数を考慮し、可能な限り公平になるよう工夫されています。

PSC deficiency performanceは平均指摘数との比較で評価される。また、直近の結果ほど影響が大きい。

具体的には、当該港の平均指摘数と本船が受けた指摘数を比較して計算されます。例えば、本船が受けた指摘数が当該港の平均指摘数より少ない場合は、PSC performanceは良い方向に作用します。RightShipでは将来発生するリスクの評価を鑑み計算されているため、良い結果・悪い結果共に直近のPSC Inspectionの結果ほどスコアに大きく影響します。

藤井:PSCによる指摘以外にはどのようなデータが本船のスコアに大きな影響を与えるのでしょうか?

Safety Scoreに最も影響を与えるのは過去5年以内に発生したインシデント(事故)及びDOC(管理会社)スコアです。次にPSCによる指摘・拘留が影響します。

インシデントは一律に評価されるわけではなく、内容によって影響度合いが異なります。

事故内容では、(カテゴリA)人命に関わるものや全損が最も影響度合いが大きく、次いで、(カテゴリB)航行できなくなるほどの船体損傷や不稼働、深刻な火災・油濁等、そして、(カテゴリC)例えば堪航性を維持できている重大でない損傷、深刻でない火災や海洋汚染などが続きます。上記カテゴリに該当しない軽微なものはSafety Scoreには影響しません。

また、本船が適切な対応をとっているにも関わらず避けようがなかった、本船に非が無いトラブルに関してはスコア計算に反映されません。これらのカテゴリーも管理会社様からの情報に基づき判断されます。またPSC同様、直近のものほどスコアに大きく影響します。

DOCスコア=管理会社スコアは、過去5年間の全管理船にて発生したPSC検査及び事故に基づき計算され、その際にはFleet Sizeも考慮されます。船舶Safety Score同様、直近の案件ほど点数に大きく影響し、また減点だけでなく加点方式でもあるため、PSC指摘数が平均指摘数より少ない場合や管理規模に対して発生事故数が少ない場合には点数は良い方向に作用します。

事故が起こってしまったら

藤井:船を運航する限り事故リスクを完全にゼロにすることは難しいと思います。事故が発生してしまった際にどのような対応ができるのでしょうか?

事故が発生したときには、原因を特定し、それに対する再発防止対策を策定する必要があります。(Closed Out Reportの作成)

事故には直接の原因となった「直接要因」とその背後要因の「間接要因」、その根幹となる「根本原因」があるという認識ですが、RightShipではそれらについて有効な再発防止対策を講じたかどうかを判断し、RightShipの専門スタッフにより有効と判断された場合はAcceptとされ、本船スコアの向上に寄与します。(細かい話ですが、管理会社のスコアリングであるDOCスコアは発生したEventの内容・件数に基づき計算され、是正対応・再発防止策はスコアには影響しません。)

例えば、部品の破損が原因で起こった事故の場合、その部品が破損した原因を特定するだけでなく、「なぜ破損の可能性を事前に気づかなかったのか」、「気づける体制が構築できていたのか」、「会社の安全管理システム (SMS) はその事故を防ぐ機能を有していたか」「SMSは本船・乗組員にImplementされていたか」「保守管理システム (PMS) の実施状況はどうだったか、また会社はそれをどのように確認するようになっているか」「内部監査員・本船担当監督・管理会社のクオリティは満たされているか」「乗組員のクオリティは?」「それに際し必要な教育は実施されていたか」「会社の監視システム・情報共有は適切だったか」等、それに至った事故の背景も含めて深掘りし、本当に再発防止に有効な対策を取った(根本的に事故の可能性を無くした)と認識され、Closeとなります。また、これらの対応はVettingの際にも考慮されます。事故が発生しても対応が適切になされている場合は、今後のリスクは低いと判断され、ノミネーションの際にも良い方へ影響します。

先述の通り、RightShipは船会社様をはじめとした海事産業の皆様の信頼できるパートナーとなり災害ゼロを目指すため、Acceptできない場合には、Acceptとなるまでその理由及びどういった有効措置がとれるか船会社様と協議をさせていただきます。そういったケースは多くあり、都度お役に立てるように献身しています。

藤井:表面的な対策ではなく、本当の意味で安全対策になり得るものを一緒に作っていくということですね。本日はどうもありがとうございました。山田さんの益々のご活躍とRightShipの発展を祈念しております。

山田 優

RightShip キーアカウントマネージャー

神戸大学海事科学部卒業後、LNG船、VLCC、自動車船に航海士として乗船。その後、船主・船舶管理会社の船舶管理部門にてばら積み船等の安全部でManagerとして従事。

当初はRightShipとのやり取りは無かったが、2021年に開始したSafety Score によって自社を評価されたことで喧々諤々と関わるようになった。

その後、RightShipから受けたターミナル対応のアドバイスがきっかけで、自社船、乗組員、そして自社のビジネスを守るためにRightShipを積極的に活用するようになり、程なくして、やり取りをしていたRightShip担当者より日本のRepresentativeを探しているという話があり、2021年11月より現職。

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