神棚とライスボイラーは日本人船員のアイデンティティー

日本人船員が乗船している日本船ならではの『設備・装備品』の話です。

最近はGalleyにライスボイラーを装備していない船も見かけます。日本人の乗組員数が減り、ご飯も大量に炊かなくなったことで、ライスボイラーは不要ということなのでしょうか。逆に言うとライスボイラーは日本人船員のためにあり、日本人配乗船にしかライスボイラーは装備されていないのかも知れません。日本人が数名しか乗船していない混乗船では電子炊飯器でご飯を炊く船が増えているはずです。昔は20人、30人分大量のご飯をライスボイラーで炊いていました。

但し、ライスボイラーはご飯を炊くためにだけ使用するのではありません。その長所はなんといってもお湯を直ぐに沸かすことができることです。麺類を作るときでもライスボイラーに水を入れ蒸気の元弁を開けるとあっという間にお湯が沸き、そこへ大量のそうめん、うどん、ラーメン等の麺類を入れるとあっという間においしい麺類を大量に作ることができます。日本人船員はこんなライスボイラーと共に海上生活の歴史を歩んできたのかも知れません。このライスボイラーと神棚は日本人外航船員の象徴ではないでしょうか?

ライスボイラーと言えば、20年以上も昔のことですが、韓国人と乗船したとき、彼らはライスボイラーで炊いたご飯の底に残っている「おこげ」を集めて、大きな袋にいれて、機会があれば陸揚げしていたことを覚えています。当時の「おこげ」は彼らにとっては貴重品だったようです。おこげがお金になるのです。かたい「おこげ」の真逆に当たるのがやわらかい「おかゆ」です。船上で体調のすぐれないときや胃腸の弱ったときには、Cateringに頼んで「おかゆ」を作ってもらうことがあります。では、「雑炊」と「おじや」と「おかゆ」の違いは何でしょうか? 正式に英語で何と言うか知りませんが、フィリピン人のCateringには「Rice Soup」で通じました。

日本人と欧米人を比べると食事に対する価値観はまったく異なることは皆さんも何となく知っていると思います。欧米人は自分の食生活に非常に重きを置いています。欧米人職員が乗組む外国船の中には夕食のメニューが数種類用意されており、個人が各々好きな食事を選べる船があるそうです。

また、料理はテーブルに運んでくる直前に調理するようCateringに厳しく指示します。レストランであるまいし、そこまで手間をかける必要はないと日本人は思うでしょうが、彼らにとっては当たり前なのです。全ての外国船がそうなのかどうか知りませんが、実際に何人かの欧米人船長に尋ねると「Yes」と言っていましたので、間違いありません。

私達日本人から見ると贅沢な話ですが、居住設備や食事等の生活環境に重きを置く欧米人船員では、複数のメニューを用意することや調理したての料理を食べることが当然なのかも知れません。あるいは、宗教的に食事に制限があったり、ベジタリアンであったり、様々な人種が混乗する船ではそれぞれに合わせたメニューを用意するのが当然のことなのかも知れません。

ある船では日本人の食事をビュッフェスタイルにしていました。大皿にサラダ、その他数種類のおかずを盛っておき、各人が自分の好きな料理を好きな量だけ小皿にとって食べるというスタイルです。確かに好き嫌いが多い人、野菜を多く取りたい人、油ものを制限したい人等の各ニーズに合わせることができて、合理的かも知れません。但し、好き嫌いの多い人は食事が偏るので、ビュッフェスタイルでは栄養バランスに十分気をつける必要があります。

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