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立ち尽くすだけで、何の行動も取れないようでは航海士失格

航海中の『時間記録』の話です。

航海中の様々な事象で時間を記録することが重要であることは言うまでもありません。入出港S/B時は特に時間を記録すべき項目が多くなります。Auto PilotとHand Steeringの切り替え時間や船長の操船指揮権交代の時間といった細かな事象についてもLog Bookに記入することが求められています。とにかく、些細なことでも、どんなことでもEvidenceとして記録しておくことが肝要なのです。そして、特に非常事態発生時や海難発生時には本船記録が非常に重要となりますので、発生時間、自船位置、気象・海象状況、周囲の航行環境状況等を細かく記録する必要があります。最近はVDRによって船橋内の各種データが自動的に記録されており、事故発生後の解析作業で多いに役立っていますが、やはり必要な時間を全て記録するという基本を忘れてはいけません。

非常事態が発生すると船長や航海士は冷静ではいられません。特に船長は強い責任感のために冷静さを失いパニック状態になっているかもしれません。そんなときに頼りになるのが航海士です。船長から的確な指示がなくても必要な記録を取るようにして下さい。

聞いた話ですが、ある船で東京湾入口付近を航行中、まもなくパイロット乗船というところで、突然、主機トラブルが発生しました。結果的には30分以上、運転不自由船となり漂流していたのですが、船橋では誰も時間・位置記録を取っていませんでした。トラブル発生時には船橋に船長辞令の出た3人のベテラン船長・航海士がいたそうですが、それでも重要な記録を取っていませんでした。船橋にいる全員が動揺し、平常心を保てなくなっていたのかも知れません。あるいは、記録することを失念していたのかも知れません。この例からも分かるように非常事態発生時に時間を記録することが思うほど簡単ではないということです。何かあったときには、真っ先に時計、GPS、レーダー等をチェックして必要な事項を記録し、Q/Mに気象・海象状況の観測をさせることを皆さんは常日頃から心がけておいて下さい。

一緒に乗船していたある若い航海士の例を紹介します。彼が航海当直中に主機トリップのトラブルが発生しました。大洋の広い海域での主機トリップなので、何ら慌てることはありません。しかし、その若い航海士はただ呆然と船橋に立ち尽くすだけで、何のリアクションも取ることができませんでした。非常事態を想定・経験したことがない航海士は何もできないことが多いのです。繰り返しになりますが、主機トラブル等でAuto Slow DownやStop Eng.になったときには言われなくても、以下のActionを取るよう、皆さんは頭に入れておいてください。

  1. Capt, C/Oへ連絡 (LNG船等ではタンク圧管理があるのでC/Oへの連絡が必要。)
  2. 時間記録・位置記録
  3. 周囲の航行船、陸・島・浅瀬等航行環境の確認
  4. 風・波・潮流等の気象・海象状況の確認
  5. テレグラフ操作(Engineerの指示に従う。)
  6. 操舵(AutoからManualへ切り替える。必要があれば陸岸から遠ざかる方向へ転針。)
  7. 周囲航行船への連絡(必要があればVHFで連絡。)
  8. AISのModeをNot Under Commandに切り替え
  9. 形象物の掲揚又は信号灯の点灯
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