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海難事故から学べ!-1- コンテナ船の機関室火災

重大海難事故を起こしてしまうと私達船員が長年にわたって積み上げてきた信用が大きく失墜してしまいます。しかし、これを何も悲観的に捉える必要はありません。重大海難事故の原因を究明し、私達の教訓とすれば良いのです。これからシリーズで紹介する6隻の重大海難事故には内在する様々な問題点や学ぶべき点が凝縮されていると言えます。これらの重大海難事故を参考にして同種の事故を決して繰り返さないようにしましょう。

コンテナ船の機関室火災

船内火災事故です。オークランドから東京向け北海道沖を航行中のコンテナ船の機関室内で火災が発生しました。自力による消火活動を試みましたが鎮火することができず、海上保安部に乗組員の救助を要請し、巡視船のヘリコプターにより乗組員全員が救助されました。本船は函館沖に曳航され、本格的な消火活動をした結果、完全鎮火しました。完全に火が消えるまで7日間もかかりました。不幸中の幸いですが、被害は本船の機関室のみに止まり、貨物類への延焼は食い止めることができました。

火災を長時間、消火できなかった直接原因は、燃料遮断の失敗と通風遮断装置の作動不良による密閉消火の失敗です。「燃料遮断」や「通風遮断」は消火作業の基本中の基本ですが、実際の現場で役に立たなかったのでは火災を消せるはずもありません。結局、事故後の調査でこの船の設備に問題となる不備がいくつかあったことが判明しました。

まず、火災発生時に閉鎖すべきDamperが完全に閉鎖できない状態でした。これでは通風遮断できません。

また、FOタンク等のQuick Close弁が自動閉鎖できませんでした。そのため燃料が燃え続けたのです。機関室火災等の閉鎖区画での火災は、発生場所の特定に時間がかかることもあり、場合によっては煙や炎のために火災発生場所に接近することさえできない場合もあるはずです。そのような場合でもハード面で対処・リカバーできるような仕様になっていることが有効な消火活動を行うための第一歩です。

ポイントを整理すると、以下の4点が今回の事故防止に必要な対策です。

  1. 火災の発生原因を根本的に取り除く構造となっていること。 
    → 油が漏洩しない構造、漏洩しても着火しない設備。
  2. 火災の初期対応を確実に行える設備を装備していること。
    →燃料危急遮断弁の自動閉鎖、局所消火設備の設置。
  3. 消火活動を行うための十分な訓練を実施すること。
    → 乗組員の迅速かつ適切な対応によって消火活動を成功させる。
  4. 防火設備の適切な点検・整備を実施すること。
    → 通風遮断、燃料危急遮断弁、消火設備の確実な点検整備の実施。
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