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担架よりハーネスのほうが、いざと言う時に役立ちますよ

船内で倒れた人を『救助するときに使用する道具』の話です。閉鎖区画へ入る場合にその入口付近に必ず準備すべきものは何ですか?

命綱(Lifeline)、ハーネス(Harness)、自蔵式呼吸具(Breathing Apparatus)、酸素蘇生器(Resuscitator)の4点セットです。

事故がなければ、使用することもなく、用意するのが非常に面倒ですが、私達の尊い命を救う道具です。必ず準備をしておきましょう。いざと言うときには、誰かが自蔵式呼吸具を身につけて命綱頼りに閉鎖区画内へ入り、状況を把握して必要であれば、ハーネスで負傷者を引き揚げて、酸素蘇生器で応急処理を施さなければいけません。備えあれば憂いなし(Be prepared and have no regrets !)です。

「担架」と「ハーネス」が同じものと思っていますか?厳密に言うと担架とハーネスは種類の違う器具です。多くの人は混同して使っているようですが、それでも別に問題はありません。担架は上右側写真のように2本の棒に布を張ったもので病人・怪我人を横に寝かせて運搬する器具です。

サッカーやラグビーの試合で負傷者を乗せてグランド外に運び出すときに使うのが担架です。上左側写真がハーネスですが、これは担架と同じように病人や怪我人を寝かせて運ぶこともできるし、人の体をぐるっと包み込み、縦にして引っ張り揚げたり降ろしたりすることもできます。イメージとしては担架は水平移動でハーネスは垂直移動で利用する道具です。

ある人が実際に経験した話として、バラストタンクや機関室の急な階段から患者を担架で運び揚げることは思っているほど容易ではないそうです。確かに重い担架の前後を運搬者が持ちながら狭い階段を登るのは困難を極めるでしょう。その大変さは実際に体験しないと分かりませんが、やはりハーネスを使用し、患者をしっかり固定して、縦に吊り揚げる方法が迅速に対応できるのでしょう。ですから、担架ではなく、ハーネスを機関室のエスケープトランク(Escape Trunk)底にいつでも吊り揚げられる状態で備え置いたり、バラストタンク内から負傷者を引き揚げる場合の緊急用に準備しておくのです。

機関室のエスケープトランク底には担架でなくハーネスを準備しておくと言いましたが、写真の様に肩にかけるタイプのハーネスが負傷者を引き揚げるためには、利用し易いかも知れません。それと非常に重要なことは、 エスケープトランク内で負傷者を引き揚げる際に使用する「テークル」を準備しておく必要があります。テークルがなければ、大人2人程度では重い負傷者を引き揚げることが困難なことは容易に想像できます。

ハーネスと言えば、安全ベルトは「胴ベルト型」から「ハーネス型」に変わります。これは世界的な動きで、胴ベルト型では高所からの転落事故の際、そのショックをうまく吸収できずに腹部に荷重が集中的にかかり大怪我をする恐れがあり、安全性に問題があるからです。そのために転落時に体が受ける衝撃を分散させることができるハーネス型のものが採用されたのです。

但し、ハーネス型も長所ばかりではありません。肩、胴、股をきっちり締め付けることになるので、装着時に圧迫感があったり、作業に少し負担となるかも知れません。いずれにせよ、命を守るための安全具です。高所作業にはハーネス型安全帯を必ず着用しましょう。

参考(陸上のケース)

平成31年2月1日に労働安全衛生法の政令等が改正され、「安全帯」の名称が「墜落制止用器具」に改められ、陸上の高所作業ではフルハーネス型を使用することが原則となりました。

一方、海上の作業については船員法を含め関係法は現在のところ適用されていないものの、陸上と同様に胴ベルト型からフルハーネス型へと使用を変更した企業もあります。

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