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エンジン・ア・ラ・カルト(その5)

ガバナー

「ガバナー(Governor)」という言葉をどこかで聞いたことがあると思います。航海士ならば救命艇のガバナーブレーキを思い出すはずです。しかし、機関士にとって馴染みがあるガバナーといえば、発電機についているガバナー(調速機)です。救命艇のガバナーブレーキは救命艇をおろすときにスピードがつき過ぎずに適切な降下速度となるように速度調整するものですが、機関でいうガバナーは燃料の流量を制御する装置のことです。

救命艇のガバナーブレーキと同様に遠心力を利用して流量を安定させる装置です。ガバナー製造会社として「Woodward」 というメーカーが有名です。機関士でガバナーを知らない人はいません。航海士がGyro Compassの構造や原理を理解しているのと同じように機関士はガバナーの構造と原理を理解しています。

といっても私達がGyro Compassの指北原理やプレセションを簡単に説明できないように機関士にとってもガバナーを素人にわかり易く説明するのは難しいようです。機関士に説明してもらっても、私にはよく理解できません。仮に燃料流量が一定で変化しない場合、原動機の負荷が変われば、それに追従して速度も変動してしまい安定しません。そこで負荷の変動があっても原動機の速度を安定させるように燃料流量を調整するための制御装置がガバナーです。

ガバナー機構を簡単に説明すると、L字型のフライウェイトなるものを回転させ、回転の変化で回転軸を押さえつける力が増減し、その力を油圧に変換して出力軸を動かし、最終的に燃料流量を調整して、発電機等の原動機の運転を安定させる装置です。機関士はその原理や構造を知れば知るほど、中身を触ってはいけないということが判るのだそうです。発電機を制御して安定した電気を船内に送ることができるのは、ガバナーのお陰と言えます。

V Belt

V Belt(ブイベルト)を知っていますか?航海士もV Beltがどんなものか知っておいて下さい。一番身近にあるV BeltはSewageのAir CompressorやエアコンのV Beltかもしれません。モーター軸の回転を原動部軸に伝えるために軸同士を結ぶ役割をするベルトです。

そのベルトの断面形状がVの字型になっているので「V Belt」と呼ばれています。SewageのAir Compressorは一年中休みなく回転しており、このV Beltが伸びたり、切れたりして、しばしば交換が必要になります。また、エアコン整備作業で作業着の袖口がV Beltに巻き込まれて大怪我をするという事故もしばしば起こっています。

FDF

主機のボイラーにとって重要な付属機器として「FDF」があります。英語で「Forced Draft Fan」、日本語では「強制通風機」です。ボイラーで燃料を燃やすためには大量の空気(酸素)が必要です。

そのために大容量の空気をボイラーの燃焼室に送り込むファンがFDFです。タービン船の場合、2台あるFDFファンが両方とも故障すると、ボイラーで必要な蒸気が作れなくなり、航行することができなくなります。

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