漂流する超大型タンカーの救出記録 12月13日(金)16:50〜NHKニュースシブ5時で放送

さらさらのレモン色の潤滑油を使用しましょう

意外と甲板部の目が行き届かないことが多い『注油器』の話です。

甲板機器に使用しているLO(潤滑油:Lubricating Oil)を分類すると大きくは2種類の役割に分かれます。ひとつはMooring WinchやCargo Valveの作動油としての役割です。力を伝達する媒体として潤滑油が使われます。そして、もうひとつは舷梯やキャプスタン等甲板機器の潤滑油としての役割です。機器の摺れる部分の摩擦を軽減するためにLOが使われます。LOをあるときは作動油、あるときは潤滑油として利用しており、LOは2つの顔を持つ油です。

舷梯が振り出せなくなるトラブルを何度も経験しました。原因はLubricator(注油器)の流量調整が不十分で、注油量が少ないためです。注油量が少ないとAir Motor内のBladeの動きが固着気味となって、Air Motorが回らなくなってしまいます。若い航海士の中には舷梯に付いている「Lubricator」や「Drain Filter(Drain Separator)」の構造や機能について気にしたこともない人がいるのではないでしょうか。この間、乗船した船でも何気なく注油器をチェックすると案の定、両舷梯のDrain Filterに水が一杯溜まっており、LOが殆ど空でした。

「Lubricator」の役割はAir Motor内部の潤滑のために適当量のLOを圧縮空気に混ぜて供給することです。また、「Drain Filter」の役割は圧縮空気内の水分を除去することです。機関室で作られた圧縮空気はAir Motorへ入る前に必ず「Drain Filer」で水分除去し、「Lubricator」で注油されているのです。甲板部は定期的に「Drain Filter」のDrain切りを行い、「Lubricator」の油量を確認し、不足していれば補給する必要があります。「Drain Filter」の原理はDrain Filter内部で圧縮空気の渦流を発生させ、その遠心力により水分が外側壁面に当たり、フィルター底部に溜まるようになっています。

また、「Lubricator」には適正な注油量があるので、多すぎず、少なすぎず適正な量になるように上部に付いているつまみを回して調整します。適正な注油量は種類によっても多少異なるかもしれませんが、おおよそはAir Motorを使用中に毎秒1滴がポタポタ落ちる程度です。調整不足で、数ヶ月経っても全然LO量が減っていないということが案外多いのではないでしょうか。注油器のLOが減っていなくて安心するのではなく、少な過ぎるのではないかと心配しましょう。

Air Motor内でBladeが回転する部分に供給するのですから、当然、使用する油はTurbine油系の粘度の低いさらさらのLOを使用します。ところが間違って非常に粘度の高いLOを入れている船を結構多く見かけます。タービン油の色は茶色ではなく、レモン色です。知らない甲板部員は平気で粘度の高い茶色のLOを「Lubricator」に補給するので、ときどきチェックが必要です。おそらく甲板部員は補給するために大工ストアーに置いてあるLOを持ってきて注油するのでしょうが、大工ストアーにはAir Motor用LOが用意されておらず、雑用に使用している粘度の高いLOを適当に補給しているのではないでしょうか。粘度の高いLOを入れたからと言って、直ぐに壊れるものではありませんが、やはり適切なLOを入れるよう心がけましょう。また、エアーキャプスタンやエアーモーターのLOが少なくなっていることがあります。ときどき油タンクのサイトグラスを除いて、LOが適正量のレベルまで入っていることを確認するのも航海士の仕事です。そしてLOが減少しているときは異常な漏洩がないことを確認して、不足分を補給しましょう。

航海士が各甲板機器にどんな種類のLOが使用されているかを把握しておくことはとても重要なことです。どんな機器にもメーカーが推奨・指定するLOがあります。当然、使用可能な温度範囲、粘度等のスペックが使用する機器に適合したLOを使用しなければいけません。船内で使用しているLOの種類を列挙したLO Listが船内に必ずあるので、すぐ調べられるように用意しておいて下さい。私は若い頃、はじめてLO Listを見たときに、「LOといっても一種類ではなく、何十種類もの多種多様なLO類が船では使用されているものだなあ。」とびっくりしました。船内で使用されているLOの種類は軽く10種類を超えているはずです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA