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エンジン・ア・ラ・カルト(その8)

暖機装置

LNG船の主機は、現在のところディーゼル船ではなく、ほとんどがタービン船です。どうしてもタービン船のほうが熱効率が悪く、FO価格高騰の現状では、今後、ガス焚きディーゼル主機のLNG船が多くなるかも知れません。タービン主機の場合、重要な出港準備作業として「暖機」を行う必要があります。文字通り主機を暖める作業です。タービンを暖めるために蒸気を少量ですがタービンに入れます。その結果プロペラがゆっくり回転することになります。これを「スピニング(Spinning)」と言います。

スピニングには「Manual Spinning」と「Auto Spinning」があります。Auto Spinningの場合、プロペラシャフトが停止して数十秒経つとアラームが鳴るので、その前にSteamを入れてプロペラシャフトを回転させます。いずれにせよプロペラが5回転以下の低回転で前後進にゆっくり回ります。

暖機はHP Turbine(高圧タービン)のケーシング温度が目標温度になるまで続けられます。船によっても差がありますが、あるLNG船ではHPタービンケーシング下部の温度が230℃になるのが暖機終了の目安でした。最近は暖機作業の時間短縮のため、ほとんどのLNG船はタービン主機に暖機装置を装備しています。着桟後、バイパスラインから少量の蒸気を入れて停泊中もタービンを約200℃以下に冷やさないようにしているのです。低温から暖めるというよりも着桟時に400℃以上あったタービンの温度を200℃以下に冷やさないようにする装置と言えます。この暖機装置のおかげで、緊急離桟時にも非常に短時間でタービン主機S/Bが可能となりました。

Turning Gear

係船作業が終了し、F/Eng.になると、機関部は減速ギアー部分にターンニングギアーを入れるのを知っていますか?主機の使用が終わり、もう使用しない状態、いわゆるF/Eng.になったら、電動駆動モーターのギアーを入れてプロペラシャフトを強制的にゆっくりと回転させるのです。なぜでしょうか?

もしプロペラシャフトが回転しなければ、プロペラシャフトが均一温度で冷却せずに軸受け部等に部分的な温度差がついてしまいます。その結果、プロペラシャフトが曲がってしまうという大事故になる可能性があるからです。そのため主機を使い終わったら直ぐにTurning Gearを入れてプロペラをゆっくり回転させて、まんべんなく、ゆっくり冷却させているのです。

潮流の流れが速いバースに着桟したときには、プロペラが遊転して減速ギアーが回転するためTurning Gearが入らず機関部が苦労することがあります。Turning Gearモーターの使用時間はディーゼル船とタービン船では異なります。ディーゼル船ではF/E後に数時間、Turning Gearを使用すると後は停止しますが、タービン船ではWarm Up状態を維持しているので、常にTurning Gearを使用しており、暖機作業開始まで停止しません。ですからタービン船のプロペラは非常にゆっくりですが、停泊中は常時動いているのです。もちろん、極低速なので船体移動することはありません。

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