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エンジン・ア・ラ・カルト(その11)

メカニカルシールとグランドパッキン

ポンプのシャフトはポンプケーシングを貫通していますが、その隙間から海水や清水が漏れ出てきません。なぜでしょうか?液がシャフトを伝ってポンプケーシングから外側へ漏れないようにする工夫が凝らされているからです。では、どんな工夫が凝らされているのでしょうか?液をポンプケーシングに封じ込める方法としてグランドパッキン(Gland Packing)による方法とメカニカルシール(Mechanical Seal)による方法があります。グランドパッキンには通常「ピラーパッキン」を使用します。

幾重にもピラーパッキンをシャフト周囲に挿入して押さえ込んでいるので、ポンプケーシングから海水や清水が漏れ出てこないのです。このグランドパッキンの状態が劣化や硬化すると海水や清水が漏れ始めます。その場合、グランド部の増し締めをするか、最悪の場合はグランドパッキンの交換となります。

また、グランドパッキンを交換したときは、あまり最初からグランド部を強く締めすぎないようにしましょう。グランド押さえを強く締めすぎると高速回転しているシャフトと擦れてパッキンが焼き付いてしまいます。焼き付かさないコツは一定間隔で少しずつグランド部を締め付けて徐々に慣らしていくことです。グランドパッキンが煙が出るほど焼き付いた状態を見たことがない人は、機関室のGSポンプ等のグランドパッキンが焼き付いたと連絡があれば、是非機関室へ降りて行って現場を見せてもらいましょう。「百聞は一見に如かず」です。

一方、メカニカルシールは非常に高価ですが、密封性に優れています。ポンプケーシング本体側に固定する部分とシャフト側に固定して回転する部分に2分割されており、両方の当たり面(接地面)はカーボン製やセラミック製で非常に滑らかで当たり面同士がスプリングの力で押し付けあって密閉状態を作り、海水がシャフトを伝って漏れ出さないようになっています。

FNテープ

FOやLOの配管フランジ部から漏洩があった場合、漏油が他の機器の高温部に触れて火災発生という重大事故につながる恐れがあります。SOLASでは「燃料ラインは適当な覆い又は漏油飛散防止措置を施す」よう規定されています。

そこで、万一漏洩があっても飛散しないようフランジ部を「Anti-splashing Tape (F/Nテープ)」で覆います。この飛散防止テープはNK等船級に承認されています。また、船ではフランジ継ぎ手からの油飛散防止対策だけでなく、冷却海水や冷却清水がフランジ継ぎ手部から漏洩して配電盤や電気機器に直接かからないように遮蔽板設置等の対策が施されています。

MGPS

英語の「Marine Growth Prevention System」の略で、日本語では「海洋生物付着防止装置」です。せっかくドックできれいにした船体ですが、徐々に貝や藻が付着します。特に機関室の海水取り入口に貝が付着して完全に塞がれてしまうと、海水を利用できなくなり最悪の場合、船を止めてSea Suction等を掃除することになります。そのため貝や藻等の海洋生物がSea Suction部に付着するのを防止する装置が「MGPS」です。原理は海水を電気分解し、その際に生じる塩素化合物(次亜塩素酸ソーダ: NaClO)をSea Chestやパイプを流れる海水に混入させて海洋生物が付着するのを防いでいます。

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