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油圧ラインのExpansion Tankは何のためにある?

油圧で駆動力を伝達する便利な装置が船の各所で使用されています。Mooring Winch、Steering Gear System、バルブ開閉装置等々。その中でMooring Winchの『油圧ライン』の話を一つ。

Mooring WinchのHeader Tank(Expansion Tank)を意識したことがありますか?過去に、何人かの航海士に「係船機の油圧ラインのExpansion Tankはどこにある?」と尋ねたことがあります。中には、その存在さえ知らない人がいました。当然、その人はExpansion Tankの役割も知りませんでした。

Mooring Winchの油圧システムのタイプによってExpansion Tankが必要なタイプと不要なタイプがあります。油圧ラインも温度変化により膨張・収縮します。Expansion TankからのHead圧により一定の圧力をかけることによって、油圧ライン内の油の膨張・収縮を吸収し、ポンプサクション側に水頭圧を掛けてライン内にベーパーが入ることを防止しているのです。

Winchの油圧ポンプを始動させる前に手動ポンプやエアー駆動のピストンポンプでExpansion TankへLOを送り、Expansion Tankからオーバーフローして戻ってくるのをのぞき窓(Sight Glass)で確認します。ちなみに機関室内の冷却水ラインにもExpansion Tankが装備されています。機関室内のExpansion Tankは冷却水の膨張・伸縮の吸収、ポンプキャビテーションの防止の他に薬品(防錆剤)投入場所としての役割もあります。

ではウィンチ油圧モーターの「スペースヒーター(Space Heater)」とは何でしょうか?ウィンチ用油圧モーターやステアリングモーターの電源パネルにはいくつかのランプがありますが、そのパイロットランプの中にオレンジ色か青色のスペースヒーターの表示ランプがあることを知っていますか?この表示ランプが点灯しているときはスペースヒーターがONの状態です。スペースヒーターの役目はモーターのコイル部を暖めることです。文字通り、モーター部スペースのヒーティングです。

モーターのコイル部への水分の浸入で絶縁が低下するとモーターコイルの焼損する危険性があります。そこでHeaterでコイル部を暖めて水分を除去しているのです。このランプはモーターが運転されているときには消灯し、モーターが停止しているときに点灯します。つまりモーター運転中はスペースヒーターは切れており、モーターが停止して冷温状態のときにスペースヒーターが自動的にONとなりHeating状態となるのです。

ある船でOil Spill Drill(流出油防除訓練)を実施したときのことです。シナリオの中に「油圧ラインからの油の漏洩が認められるので、Emergency Teamが油圧ラインのSupply Valveを閉める。」ことになっていました。船橋配置の外国人3/Oに「このシナリオの閉めるべき油圧ラインのバルブの場所は?」と尋ねましたが、彼は答えることができません。油圧ラインの何処にどんなバルブがあるかを知らないのです。3/OはCOCでのバルブ操作については習熟しているけれど、現場のパイプやバルブの配置や構造を理解していないのです。これでは緊急時に3/Oは役に立たず、C/Oが一人で甲板上を走り回る姿が眼に浮かびます。みなさんも甲板上のパイプやバルブを何気なく眺めるのではなく、何処をどのような配管が通り、どんな役目のバルブが設置されているかを注意深く観察して頭に入れておきましょう。

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