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Bコック、閉めたつもりが開いていた

異常が発生した際に、事故防止のために自動的に安全側に機能するシステムの話です。

「Fail Open」と「Fail Close」の違いを知っていますか?機器によっては安全維持のために、電源喪失や油圧動力源が喪失した場合に、自動的にバルブを安全サイドに作動させるシステムとなっています。何らかの原因でトラブルが発生したときにバルブが閉まった方が安全な場合は、自動的にバルブが閉まる「Fail Close」を採用しており、開いた方が安全な場合は自動的にバルブが開く「Fail Open」を採用しています。このシステムは電源や動力源が喪失してバルブが動かない状況に陥ってもバルブが開閉するようにバネの力やアキュムレーターの油圧を利用しています。

Windlassの油圧ブレーキがまさに「Fail Close」の思想で設計されています。通常はスプリングの力でレバーを押さえつけてブレーキがON(締まる)となる状態です。そしてブレーキをOFF(緩める)にするには、スプリングの力に逆らってレバーを油圧で動かします。従って、油圧の力が無くなると、スプリングの力で自然とブレーキがON(締まる)となる仕組みです。トラブルで油圧がなくなってもWindlassのブレーキが締まる方向、つまり安全サイドに働くシステムです。


次にバルブの一種であるコック(Cock)の話です。

コックを日本語に訳すと「栓」ですが、酒樽のコックと同じような形状をしたコックが船でも各所に使用されています。例えばポンプのドレン抜きや圧力計についています。では、このコックに「Aコック」と「Bコック」の2種類があることを皆さんは知っていますか? 機関士は常識として知っているはずですが、意外と航海士は知らない人が多いかも知れません。

下図のようにコックのハンドル位置が流れに対して直角の位置にあるときに「閉」のコックがAコックです。直角の位置で逆に「開」となるのがBコックです。

私達の普通の感覚では、Aコックが一般的です。ときどきAコックとBコックを勘違いしてトラブルにつながることもあります。てっきりAコックと思い、「閉」としたつもりが、「開」となっていたという間違いです。殆どのコックはAコックですが、ときどき用途によってはBコックを使用しているので、要注意です。

ハンドルがどっち向きで「開」となるかは、コックの頂部の印を見れば判ります。下写真にあるポスターがまさにBコックのバルブです。白色の位置から黄色の位置にハンドルを動かすとバルブは開(Open)となります。

船のコントロールパネルにおいてバルブの表示ランプが赤色のときは「閉」、緑色のときは「開」というのが船員の常識です。ところが陸上施設のコントロールパネルではこれがまったく逆になっています。陸上施設ではバルブの赤色ランプが点灯しているときは「開」、緑色ランプが点灯しているときは「閉」なのです。一般的に緑色は「安全」、赤色は「注意」という意味が込められているはずです。

従って船では「閉」バルブに注意すべきという設計思想から閉位置が赤色です。一方、陸ではバルブが開いていることが正常で、「開」状態であることを確認すべきであるという設計思想から開位置が赤色となるのです。また、陸上のシステムでは電気回路に重点を置いており、Openのときにはその電気回路が切れており、それを「赤」で示すそうです。

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