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微妙な明るさ調整が可能なラピッド型蛍光灯

船の甲板、居住区、機関室等を明るく照らしている『蛍光灯』の話です。

大型船で使用されているその数は軽く1000を超えています。蛍光灯に色の区別があるのはもちろん皆さんもよく知っていると思います。「白色」と「昼光色」、英語で言えば「Cool White Color」と「Daylight Color」。

どちらを使用するかは個人的好みで好き嫌いがあります。では、蛍光灯に明るさを調整できるものとできないものがあるのを知っていますか?今でこそ当たり前のように船橋や階段にはディマーによって輝度調整ができる蛍光灯が付いています。しかし、私が船に乗り始めた頃には輝度調整が可能な蛍光灯はなく、明るさを調整できる蛍光灯を始めて見たときには、感動しました。

輝度調整できる蛍光灯には、専用の蛍光灯を使用することも知っていますか?蛍光灯には「スタータ型」と「ラピッドスタート型」の2種類あり、スタータ型の蛍光灯ではGlow Starterが必要ですが、ラピッド型ではGlow Starterが不要です。しかもラピッド型はディマーによって微妙な明るさ調整が可能です。ラピッド型はスタータ型に比べて価格が高いので、ラピッド型をスタータ型の蛍光灯の箇所に使用しないようにして下さい。時折、その違いを知らずにラピッド型を無駄に使用している船がありますので注意が必要です。

「蛍光灯」という呼称は「蛍光放電灯」を略したものです。原理はガラス管内に水銀蒸気を封入し、その中で放電することによって発する紫外線を管内に塗装している蛍光体に当てて発光させています。見た目通り白熱灯よりも発光効率が高く、明るい照明装置です。水銀灯や蛍光灯は管内に水銀蒸気を封入していますが、ナトリウム蒸気を使用しているのがオレンジ色に発光するナトリウムランプです。

また、水銀灯や蛍光灯等の放電灯には「安定器」が必要です。英語でバラスト(Ballast)と言います。詳しい原理は知りませんが、放電灯は点灯するとどんどん電流値が上がり、電圧が下がる傾向があり、放っておくとランプが壊れます。その電流値を安定させる役目を安定器(Ballast)がしています。

注意

2017年発効の「水銀に関する水俣条約」によって2020年までに水銀灯の製造や輸出入は禁止されます。

条約の解説(環境省)

余談ですが、あなたの家の照明は「白色」ですか?それとも「昼光色」ですか?高級家具屋へ行って気が付きましたが、高級な照明器具の多くはオレンジがかった昼光色のランプを使用しています。シャンデリアやおしゃれな照明器具はみんな昼光色なのです。そもそも高級照明器具には蛍光灯を使用していないのかも知れません。ヨーロッパーの古い民家の照明のイメージも昼光色の灯りです。一説によると、白人は青い目のため光の眩しさに弱いために白色でなく、昼光色を使うのではないかと言われています。

昔から反応の鈍い人のことを「昼行灯(ひるあんどん)」と比喩しますが、別の言い方として蛍光灯が直ぐに点灯しないことから、「あの人は蛍光灯みたいな人」と比喩していました。しかし、ラピッド型蛍光灯の出現で、そう呼べない時代になったということです。逆に反応が鋭く、臨機応変に調整できる人を「ラピッド蛍光灯のような人」と呼ぶようになるのかも知れません。

ところで、近年、船舶でもLEDが船内の照明や航海灯等に使用されるようになりました。LEDランプの長所は寿命が通常の蛍光灯の何倍も長く、消費電力も少なくて済むことです。短所は非常に高価なことです。陸上ほど船では普及していませんが、これからどんどん価格も安くなるので、消費電力が少なく、かつ、寿命が長いという長所を考えれば、簡単にAccessできない高所やDBPP内の電灯にLEDランプを使用するメリットは確実にあります。近い将来、船内の電灯は全てLEDランプという時代がやってくるでしょう。

蛍光灯や電球が切れた場合に3/Eや甲機部員が交換する労力や時間を積算すれば、「塵も積もれば山となる」ではありませんが、かなりの仕事量になるはずです。LEDランプを使用すれば、その労力や時間を他の作業に当てることができるのです。要は費用対効果で判断すべきで、費用が高くなってもそれに見合った効果があるなら、船内の蛍光灯や電球をどんどんLEDランプに交換すべきです。

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