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伝統ある単位、統一される単位

船で使用される様々な『単位』の話です。

使用する単位(Unit)が各国、各分野で異なっていると不便であることから、世界各国が国際単位系(SI)へ統一する方向へ動き出し、我が国も段階的に国際単位系を使用するようになりました。

SIとはフランス語のLe Systeme International d’Unitesの略です。一昔前までは船で使用されていた圧力単位はkg/cm2やmmAqでした。おそらく、陸上でも昔は同じようにkg/cm2が使用されていたはずです。それがいつの間にかkPaやMPaという国際単位系が使用されるようになり、既にかなりの年月が経ちました。正確には1999年9月が単位系移行の猶予期間でした。国際単位系では基本単位として長さはメートル(m)、質量はキログラム(kg)、時間は秒(sec)、電流はアンペア(amp)、温度はケルビン(K)、光度はカンデラ(cd)、物質量はモル(mol)を使用します。さらに補助単位として平面角はラジアン(rd)、立体角はステラジアン(srd)を使用します。

皆さんも気付いているかも知れませんが、最近は自転車やテレビのサイズに「インチ」という言葉を使わなくなりました。例えば昔は、24インチの自転車や46インチのテレビと言っていたのが、今は26型自転車、46型テレビと言います。国際単位系を使用するという理由から、インチという言葉を使用しなくなったのかもしれません。世間でkPaやMPaが使用されるようになって、私個人的には非常に抵抗感がありましたが、最近はkPaやMPaにすっかり慣れ親しんで、まったく違和感がなくなったのは私だけではないでしょう。

ところで、アメリカでは早くからkPaを使用していました。私達の船はまだkg/cm2やmmAqを使用していたので、陸側と連絡を取る際に、いちいちkg/cm2やmmAqを頭の中でkPaに変換しなればいけません。そこで、入港する前に、圧力計にkPa単位の目盛りを書いた紙を貼り付けて、すぐにkPaに換算できるようして対応しました。それも今となっては懐かしい思い出の一つとなってしまいました。

今ではタンク圧10kPaと言われても感覚的にどの程度の圧力かが直ぐに判りますが、当時は聞き慣れない単位に苦労した思い出があります。気圧の単位も、一昔前はミリバールと呼んでいましたが、現在はヘクトパスカル。人間は慣れる動物です。テレビでお天気お姉さんが「台風は発達して中心気圧は960ヘクトパスカルとなりました。」と言っていても、全然違和感がありません。

さて、皆さんはkPaやMPaという単位を何気なく書いているでしょうが、書き方を間違っていませんか?私達航海士は物質を運ぶプロです。物理系の単位ぐらい正確に記述しましょう。キロパスカルは厳密にはkPaの「k」と「a」は小文字で「P」だけが大文字です。そして、MPaの場合、「M」と「P」が大文字で「a」だけが小文字です。単位にも細かな決まりごとがあるのです。今後は正確にkPa、MPaと書きましょう。

実は船で使用する海里やノットはSI単位系ではありません。さすがに伝統ある海里(マイル)やノットをキロメートルや時速km/hに変更して使用するには、緯度分・経度分で仕事をしている私達船乗りにはあまりにも違和感があり、混乱を招くでしょう。そのため、海里やノットはSI暫定併用単位として例外的にその使用が国際的に認められています。マイル(miles)やノット(knots)という単位は、私達船員が脈々と受け継いでいる伝統の象徴なのです。

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