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パラワンと言っても南シナ海のパラワン航路ではありません

タンカー、LNG船、ケミカル船等の危険物積載船に乗船するために必要な『資格』の話です。

「パラツー」と言ってピンときますか?「Paragraph Ⅱ」を略してパラツーと呼びます。日本語で言うと「甲種危険物等取扱責任者資格」のことです。この資格は非常に重要です。この資格がなければ主任者以上、つまり船長や一航士で危険物積載船には乗船できません。つまり、この資格を有することが危険物積載船の船長や一航士の必須条件なのです。この資格は危険物積載船を石油(オイル)、液体化学薬品(ケミカル)、液化ガス(LNG・LPG)の3種類に分類しています。

ここでは甲種危険物等取扱責任者(低引火点燃料)・乙種危険物等取扱責任者(低引火点燃料)を省きます。

この3種類とも別々に乗船履歴が必要で、全てを所有する航海士は非常に稀です。特にケミカルのパラツーの資格を取得している航海士は希少価値があります。該当する危険物積載船に一定期間乗船すれば、運輸局で船員手帳に認定の証印を押してもらえます。陸上勤務終了後にうっかりパラツーの有効期限が切れていて乗船するまで気が付かず、結局、乗船できなかったというトラブルも過去にありました。船員には必要な資格がたくさんあるので、陸上勤務後の資格の期限切れに要注意です。

パラツー(Para Ⅱ)があるならば、当然パラワン(Para Ⅰ)もあります。あのタンカーが時化を避けるために採用する南シナ海のパラワン航路ではありません。パラワンを日本語でいうと「乙種危険物取扱責任者資格」です。危険物積載船に乗り組む主任者以外の乗組員には一定の乗船経験を経た後にこのパラワンの認定を受けて船員手帳に印鑑を押してもらう必要があります。

最近は「Crew Matrix」という言葉をよく耳にします。「Crew Matrix」とは職員の乗船経験年数を一覧表にしたものです。横列はDeckなら船長から3/Oまで、Engineなら機関長から3/Eの各職員が並んでいます。縦列は船員経験年数、危険物船の乗船年数、LNGタンカー乗船年数、本船乗船期間が並んでいます。各人の経験を一覧表に見やすくしたものがCrew Matrixです。

とくにOil Measure CompanyのShellの履歴要求基準が非常に厳しく、船長とC/Oは各2年以上の実乗船経験を求めています。実乗船2年となると、3~4隻はその職で乗船しているということになります。同じく2/O、3/Oは実乗船経験1年以上を求めています。もちろん実乗船期間にJr.やTraineeでの乗船は含まれていません。

Shellは新人船長・航海士や新人機関長・機関士はお断りということです。経験は他の会社の船で積んで来て下さいというスタンスなのです。誰でも初実職という時期があります。従って、Shellの要求を補間するための便宜上の策として、船長がベテランならばC/Oは新人でもOK、C/Oがベテランなら船長は新人でもOK、つまりどちらかが不足している履歴を補うことができるということになっています。

内容は執筆当時のものです。最新の情報をご確認ください。

パラワンと言えば、パラワン航路で有名なフィリピンのパラワン島は実は流刑で有名な島なのです。島には今も塀の無い刑務所があるそうです。罪人を島流しにするのは世界中各国で行われてきた処罰方法です。アメリカ合衆国や豪州が英国の犯罪者の流刑の地であることは有名な話です。もちろん日本で有名な流刑の地は江戸時代の八丈島です。韓国の観光の島、済州島も昔は流刑の島でした。ナポレオンが島流しされていたのは、セントヘレナ島。他にもインドネシアのモルッカ諸島のBuru島には大きな収容所があって、多数の反政府者が島送りに遭いました。

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