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世界各国を訪れる外国航路の船ならではの制度

無線関連の話をいくつか。

昔は通信士が乗船していたので、航海士は無線関係業務の知識がほとんど不要でしたが、GMDSS船となってからは、無線業務についての最低限の知識・経験、そして実務が必要となりました。例えば、皆さんは「AAIC」といってピンとくるでしょうか?船橋のVHFやMF/HF装置のどこかに必ず「AAIC: JP01」と表示しているはずです。これは「本船の通信費の料金清算機関はKDDIです。」という意味です。JP01はKDDIのコード番号です。FOC船では「AAIC: JP03」と表示しているかも知れません。JP03は協立電波サービス㈱のコード番号です。

では、AAIC(Accounting Authority Identification Code)というコードの意味は何でしょうか?船の場合、様々な海岸局/海岸地球局(プロバイダー)を使用して通信を行います。国ごと、港ごとに各プロバイダーが各自ばらばらに船舶管理会社や船主に通信料金を請求するのでは手続きが煩雑となり、また、回収できないリスクも生じます。そこで、国際的な取り決めによりプロバイダーとユーザーの間に指定された仲介者、いわゆる「料金清算機関」を立てて、この機関(AAIC)がユーザーである船舶管理会社から料金を回収し、各プロバイダーに支払っているのです。ですから、AAIC: JP01の船は通信費を一括してKDDIに支払い、KDDIが各プロバイダーと清算しているのです。この制度は世界中を移動する外航船舶ならではの制度かも知れません。

無線関連用語には様々な略号が使われています。例えば「EGC」とは何の略号でしょうか?「Enhanced Group Call」の略で、日本語では「グループ一括呼び出し」と言います。インマルサット通信を使用した通信機能で、陸上から船へ自動的にメッセージを送信するものです。サービス海域のコード記号をインマルCの端末装置で設定すれば、自動的に海上安全情報を受信してプリンターに印字されます。

航海用語集(日本航海学会著)

豪州ではNAVTEX受信機による情報提供を実施していないので、このインマルCによる海上安全情報(AUSCOAST warningsを含む)を必ず受信する必要があります。AMSAのPSC検査時には検査員が確認することがあるので、豪州寄港船は要注意です。あなたの船では無線設備のコンソール周辺にNAVAREAの海域コードを示した図を表示していますか?この海域設定は非常に重要で検査で確認されることが多いので、自船の航行している海域のコードがすぐに判るよう表示しておいたほうが良いでしょう。

無線の話をもうひとつ、アースの話です。付近海域で稲光が見えて、船に雷が落ちる可能性があるときは、無線送信アンテナを接地(アース)に切替えます。危険物船では過電流による爆発や機器の損傷を防止するために電気ケーブルの中間にBarrierというものを設置しています。場所は危険区域と安全区域の境界付近の安全区域側に設置しています。レーダーマストやライトポストの支持するステーワイヤーにも絶縁のために途中に碍子(がいし)を入れています。

街の送電線にも絶縁のために取り付けられており、白色の陶磁器又プラスティック製です。碍子のおかげで雷がアンテナや電線に落ちても地面まで届きません。

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