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漁ろうに従事してない船は漁船でない

私達が操船する大型船にとってはやっかいな存在な漁船ですが、そのときの作業状況によって漁船の立場がまったく変わるという話です。

海上衝突予防法に定義されている「漁ろうに従事している」とは、「船舶の操縦性能を制限する網、なわその他の漁具を用いて漁ろうをしている船舶」とのことです。従って、漁船を浮かべて釣り人客が釣り糸を垂らして釣りを楽しんでいる漁船、いわゆる「遊漁船」は海上衝突予防法で定義する「漁ろうに従事している船舶」ではありません。釣りを楽しんでいる人には申し訳ありませんが、大型船の航行を妨害している場合は、大型船が近づいてきたら出来る限り早めに逃げてもらいたいものです。それを我関せずと素知らぬ顔をして大型船を避けない遊漁船は大型危険物積載船を先導している警戒艇から移動するように依頼されます。

漁ろうに従事している漁船と釣りを楽しんでいる遊漁船を皆さんは区別できますか?浦賀水道航路や伊良湖水道航路のど真ん中で釣りを楽しんでいる船は漁ろうに従事している船舶でないので航路を塞いで釣りを楽しんではいけません。警戒艇や海上保安庁の指導があれば速やかに航路外に退去しなければならないのです。私達は通常航行中に漁ろうに従事している漁船を避ける義務があるので、ついついどんな漁船でも漁船らしき船影を見つけると、無条件に避航する習慣がついていますが、遊漁船に優先権はないのです。

他国に比べて漁船の数が圧倒的に多い日本ですが、よくよく考えれば漁船が多いのは東京湾、伊勢湾、大阪湾、豊後水道のどこでも入口付近です。やはり潮の流れが早くて水深が浅い良い魚場が湾入口に集中しているのでしょうか?

学校でも習ったと思いますが、他の航路に比べて伊良湖水道は片側700m以上の可航幅を取れないので巨大船同士と、巨大船と準巨大船(全長130m以上200m未満の船舶)のうち危険物積載船との対面通航が禁止されています。日本の他の多くの航路では700m以上の可航幅なので、常時対面通航が可能です。(但し、航路によっては、巨大船同士が航路内で対面通航しないよう航行管制しています。)

執筆当時の情報です。最新の情報を念のため、ご確認ください。

このような細かな規則の意味や背景を私達は学校や練習船で習うので理解しています。しかし、外国人航海士には馴染みがないため、丁寧に説明してあげる必要があります。

以前、ホルムズ海峡付近でVLCCが軍艦と衝突するという信じられない事故が発生しました。軍事行動・軍事演習中の軍艦には海上衝突予防法は適用されないのかも知れませんが、軍艦といえども通常の航行中には一般商船との関係に対して海上衝突予防法が適用されるのではないでしょうか。規則を度外視したとしても操縦性能がずば抜けて良好な軍艦ですから一般商船を避けることは簡単なはずです。それが衝突するとはどうしても信じられません。軍事行動に特化した軍艦は意外と一般航行が不得意なのかも知れません。操縦性能抜群の軍艦は恐らく自動車のように自由自在に操船できるのでしょうが、一般商船の立場では「もっと早く変針すればなあ」とか、「なぜそんなに近づいてくるのか」と思います。

ホルムズ海峡と言えば、ホルムズ海峡航行中によく遭遇するのが、分離航路を高速で横切る多数のボートです。時間帯によっては二人乗りのボートがオマーンやUAEからイランへ向かってまっしぐらです。イラン人が豊かなUAEやオマーンで物資を仕入れてイランに帰る途中なのではと思いますが、双眼鏡で見てもボートにはほとんど荷物を積んでいません。昔からこの光景は変わっていません。

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