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同じ架台にライフラフト2個の設置はダメ?

「船首のLife RaftにSenhouse Slip Hookが設置されていますか?」と言われて、意味が分かりますか?

「Senhouse Slip Hook」とは下写真のように手動で簡単に外れるHookのことです。Life Raftは普段は簡単に外れてはいけませんが、緊急の場合には手動ですぐに外すことができなければいけません。そのために、このようなSenhouse Slip Hook又はこれと同等の機能を有する装置が設定されているはずです。

過去、SIRE Inspectionで指摘された事項を紹介します。「Life Raftが2個同じ架台に設置されているため、Manual及びAuto Releaseする場合、Life Raftが2個同時に投下されてしまって、1個ずつ別々に投下できない。」という指摘です。あまり意識したことがありませんでしたが、古い船では下写真(上)のように2個を同じ架台に設置していますが、最近の船では写真(下)のように1個ずつ独立しています。

当然のことながら、2個同時にしか投下出来ない仕様よりも1個ずつ投下できる仕様のほうがFlexibleに対応できるといことでReasonableな設置方法です。もし、2個が同じ架台に設置されており、下側のLife Raftが何らかの理由で海中投下できない場合、上側のLife Raftも簡単には海中投下できなくなります。このようなリスクを無くすためにも別々の架台に設置した方が良いのです。

SOLAS Chapter III, Regulation 13.4.3

“Liferafts shall be so stowed as to permit manual release of one raft or container at a time from their securing arrangements”

この規則は1996年のSOLAS改正で追加され、1998年7月1日以降にKeel Laidした船舶に適用される。

ところで、規則によって年1回、業者(船舶の旗国主管庁により認可された整備事業所)によるLife Raftの整備が義務付けられており、港で業者により取り外して陸揚げして整備します。たっぷり時間がある場合は、本船のLife Raftを業者が陸揚げして整備した後に復旧できます。しかし、最近の船の多くは停泊時間が限られているため、業者が予め整備済みのLife Raftを持参して来ており、本船のLife Raftと積み替えることが多いようです。

また、LNG船のように作業時間が多く取れない船では入港前に本船乗組員でLife Raftを架台から取り外して、クレーンのそばに置いておき、着桟後速やかにLife Raftが交換できるようにしています。その際に注意することは、取り外したLife Raftを運ぶときにデッキ上をゴロゴロと転がさないよう整備業者から注意されます。理由はコンテナ容器が破損しやすいためなのか、内容物が崩れて、適切に展張できなくなるためか、定かではありませんが、とにかく転がさないよう注意しましょう。

ちなみにLife Raftの重さはどれ位あるのでしょうか?Life Raftの重さまであまり考えたことがないかも知れませんが、毎年業者による点検整備においてクレーンで取り外したり、数人がかりで持ち上げて設置したりする光景を目にしたことがあるはずです。ですからそれほど重くはありません。正解は最大でも185kg、おそらく150~180kg程度の重量です。Life Raftの重量はSOLASのLSA(Life Saving Appliances)や船舶救命設備規則に規定されており、1つのコンテナに185kgを超えない重量で納めることと明記されています。

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