船学の動画サイトがOPEN!

「舵はもうよろしいですか?」の一言が欲しいのです

3/Oに求められているちょっとした『気づかい』の話です。

入港スタンバイ中の船橋における3/Oの役割が非常に重要なことは言うまでもありません。船長や水先人の補佐役として、S/B中は船橋内において見張り、船位確認、時間記録そしてテレグラフ操作をてきぱきとこなさなければいけません。テレグラフの前にぼっと突っ立っているだけでは、3/O失格です。肉眼、双眼鏡、レーダーで他航行船や漁船・ブイを監視したり、自船位置を確認したり、他船や関係先とVHF連絡を取り合ったりと船橋をところ狭しと動き回る必要があります。

しかし、一方ではテレグラフの前で集中すべきときもあります。それは岸壁・桟橋に近づいて主機を頻繁に使用するときです。ある3/Oは岸壁直前となり、頻繁に主機を使用するようになっても、ログブックを書くためにチャートテーブルとテレグラフを行ったり来たり走り回っていました。また、ある3/Oは船位を入れるためにレーダーに張り付き、テレグラフを引くためにBridge Console前へと行ったり来たり走り回っていました。

いくらログブック記録や位置確認が重要でも岸壁が近付き、主機を頻繁に使用して船速を微妙に制御しているときはテレグラフの前で集中すべきです。慌しく走り回る3/Oの姿を見るとこちらも不安になります。あわてたり、注意散漫になったりして、テレグラフオーダーの前進と後進を間違って大事故につながるかも知れません。時々刻々と変化する状況においては、今何をすべきかという問いに対する完璧な正解はないかもしれませんが、今何が最も重要で船橋のどこでどのような行動をすべきかを常に考えるよう心掛けましょう。

テレグラフの話をもう一つ。

Sea SpeedからS/B Full Speedに減速するとき、主機制御を船橋からECRに切り替えて機関士に回転数をゆっくり下げてもらいます。回転数がR/Up領域からS/B領域のある回転数まで下がったところで、テレグラフのゴングが鳴り、船橋テレブラフ位置をR/Up領域からS/B領域に下げる必要があります。そのときテレグラフをFull Aheadに合わせて、「S/B Engine Sir !」と報告する3/Oがときどきいますが、間違いです。テレグラフをFull Ahead位置にしたので、S/B Engineと言いたくなるのでしょうが、まだ実回転数はFull Aheadまで下がっておらず、制御位置もECRのままで、船橋ではありません。回転数がFull Aheadまで下がって、主機制御を船橋に切り替えて初めて「S/B Engine Sir!」と言わなければいけません。当たり前のことですが、これができていない3/Oが結構多くいるのです。

岸壁・桟橋直前まで来て、もう舵を使用しない状態でも船長やパイロットは着桟(岸)操船に集中しており、「舵、よろし!(Dismiss Wheel)」と指示する余裕がない船長・パイロットが多いはずです。そんなときは船長やパイロットの様子を伺い、さりげなく船長に「舵はもうよろしいですか?」とアドバイスしてあげて下さい。大概の船長は「おお、忘れていた。もう開いていいよ。」と言うはずです。たまには、「まだ、早い。」と怒ったように言い返されることもありますが、気にせず寛大な心で船長にやさしくアドバイスしてあげて下さい。

同じように船首尾配置に立っている航海士も船長にやさしくアドバイスしてあげて下さい。例えば、防波堤や航路を出て周囲が明らかにクリアーになったのに一向に「後片付けして開いてよろし!(Thank you, Dismiss fore station)」と船長からのオーダーがきません。船長も人の子、緊張していたり、他のことに気を取られて船首、船尾配置を開くことを忘れることもあります。こんなときには、さりげなく「ブリッジ、後片付けが終わりました。ウィンチモーターを停止します。」と言って船長に船首配置を開くのを忘れていることを促してください。直接「キャプテン、もう開いてもいいですか?」と聞くよりも船長にとってはやさしく、ありがたい一言になります。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。