ターミナルでは釣り禁止なのに、なぜデッキに干し魚が!?

私達船員にとっては何かと制限が厳しい『ターミナル規則』の話です。

内外地問わず、最近はどこの岸壁、桟橋でも魚釣り禁止となってしまいました。公共岸壁に着岸する船に乗っていないので近況を知りませんが、やはり公共岸壁でも釣りは禁止なのでしょうか?世知辛い世の中になったとはこのことでしょう。 船員の数少ない楽しみのひとつである魚釣りの楽しみまで奪われてしまいました。昔は鉱石船で豪州のダンピアやポートウォルコットへ寄港したときは桟橋から信じられないぐらい大きな鯛を何匹も釣ったものです。50cmを優に超える大物ですが、残念ながら味の方は日本の鯛には到底及びません。

魚釣り禁止の理由の一つは、桟橋の定期点検のために、ダイバーが桟橋付近で潜水したときに、釣り針や釣り糸で怪我をする可能性があるからだそうです。桟橋付近で釣りをするとどうしても、桟橋の支柱等に釣り針や釣り糸が引っ掛かることがあります。それがダイバーにとって危険なのです。釣りを禁止するもう一つの理由は、ターミナル内で船員がのんびり魚釣りをしているのをターミナル側の作業員が見て、彼らの気持ちに緩みを生じてしまう懸念があるからです。船と言えどもターミナルに接岸している間は、船陸一体の緊張感が漂う職場です。その職場で船員達だけが楽しむことをターミナル側は看過できないのです。

ある外国のターミナルでは、停泊中に船員が船尾付近で釣りをすることは黙認されていました。ルール上は釣り禁止ですが、陸上側の配慮で黙認してもらっていたのです。ところが、ある船の乗組員があつかましくもマニフォールドやShore Ladder付近で堂々と釣りをして、その現場を陸上責任者に見つかってしまい、以降そのターミナルでの釣りが厳禁となってしまいました。

乗組員が交代して、新しい乗組員が暗黙のルールを知らなかったのでしょうか?それともついつい甘えがエスカレートして、あつかましくなったのでしょうか?一人の軽率な行動が他人・他所へ多大な影響を及ぼす例です。ちなみに、私が知っている限りでは、タンカーやLNG船で着岸中に釣りができるのはペルシャ湾のUAEのDas Islandだけです。ここでは規則で釣りを禁止しておらず、Loading Masterに聞いても「Fishing, No Problem.」という返事が返ってきました。

こんな体験もしました。ある船で積地を出港した後、私が何気なくデッキを散歩していたときのことです。ふと見ると船尾のハンドレールに何十匹もの小魚がきれいに並べて吊り下げてあるではないですか。魚を天日に当てて干し魚を作っているのです。「酒の肴においしいよね。」と呑気なことを言っている場合ではありません。本船が入港する全ての港では釣り禁止です。そして最近Driftingも錨泊もしたことはありません。ということは、紛れもなく誰かが積地ターミナルで魚釣りをしたのです。びっくりするやら、あきれるやら、唖然としました。当然、釣りをした本人にはターミナルの魚釣り禁止の規則について説明し、厳重注意をしました。

話は変わりますが、あるターミナルで突然、携帯電話の持ち込みが一切禁止となりました。電源を切っていても携帯電話を持ってゲートを通過できません。本船担当代理店も仕事にならないと困っていました。乗組員も携帯電話を持って上陸できません。さらに、ある港では突然ターミナル内へのお酒の持ち込みが禁止となりました。そのため乗組員が上陸してお酒を買ってくることもできません。また、あるターミナルでは家族の訪船が禁止となりました。

これら全ての事例に共通することは、一部の不届きな乗組員がターミナル規則を破って、携帯電話の電源を入れたまま上陸したり、お酒を飲みながらゲートを通過したり、実は他人なのに家族と偽って船に呼んだりして、それが見つかって問題となり、ターミナル規則が一層厳しくなったのです。ついつい、まあいいかという気持ちで規則を破って、結果的に多くの船員に迷惑をかけているのです。皆さんも規則を守ることは自分だけのためではなく、船員全員のためであると肝に銘じておいて下さい。

MEMO

2001年の米国同時多発テロ事件の発生を契機に国際的な保安の確保のためSOLAS条約が改正され、世界中の外航船の出入りする港湾で保安対策を整えることが義務付けられました。日本国内ではこれに対応した「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」が成立し、外国との間を航海する船舶とその船舶の着岸する岸壁周辺の港湾施設では、保安対策を実施することが義務となっています。

参考 港で働く方、港に遊びに来られる方へのお願い国土交通省

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