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船長や船会社がびびるとっても恐ろしい組織

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船員の仕事及び生活を支援する『海員組合』の話です。証書の中には色の着いたものがあります。「Green Certificate」「Blue Certificate」という緑色や青色の証書があるので、名前ぐらいは覚えおくと良いでしょう。写真のように文字通り、色が緑の証書をGreen Certificate、青色の証書をBlue Certificateと言います。

何の証書かというと、「本船は外国人船員を適切な待遇で扱っていますよ。」ということを証明するものです。ということは外国人船員を不当な、ひどい条件で使用している船があるということです。世界には外航船員をとんでもなく安い賃金で雇ったり、劣悪な環境で居住・労働させたりする海運会社がたくさんあるのです。

この話を理解するために、まず「ITF」という組織を知っておきましょう。ITFとは「International Transport Worker’s Federation」の略で、日本語で言うと「国際運輸労働連合」です。この団体は船に限らず、鉄道、航空、陸運、港湾等々世界中のあらゆる交通運輸の労働者を保護する世界的な団体です。例えばIFT査察官が港で訪船して船員が不当な労働条件やIFTが定める賃金以下で働かされていないかどうかを厳しくチェックします。もしITF査察官が本船の船員待遇が不当であると判断すると実力行使も辞さないほどの強硬手段を平気で行う組織です。船会社にとっては気を付けなければいけない団体です。

ある外国人船長に聞いた話ですが、若い船員が食事に不満を持ちITFに内部告発したため、その船が入港すると直ぐにITF査察官が乗船し、労務管理、給与関係契約内容、居住区設備、食料事情等を徹底的に調べられたそうです。一歩間違えば、その船は停船となり関係先に多大な影響を与えます。このようにITFは船会社や船長にとっては恐ろしい組織なのです

このITFのお墨付きとして「船員の賃金・労働条件がITFの最低基準以上を満たしている。」ことを証明するのが「Green Certificate」で、この証明書を所持していないとITFとの間でトラブルとなります。「Blue Certificate」の発給手続きを簡素化したのが「Green Certificate」ですが、私自信はBlue Certificateを見たことはありません。兎に角、色の名前の付いた証書があるということを覚えておいて下さい。

今までの話は外国籍船の場合でしたが、日本籍船の場合もJSU(全日本海員組合)がITFに加盟しているので、外国籍船のITF-GCやITF-BCと同等のJSU発行のL/C(Letter of Certificate)を取得しなければいけません。フィリピン人船員が加入する組合としてAMOSUP(フィリピン船舶職員部員組合:Philippine Maritime Officers and Seamen Union)とPSU(フィリピン船員組合:Philippine Seamen’s Union)があります。簡単に言えばFOC船に乗船するフィリピン人船員はAMOSUPに所属し、日本籍船に乗船するフィリピン人船員はPSUに所属します。

現在の日本船社の船はFOC船が圧倒的に多く、そこへ配乗されている外国人船員の中でフィリピン人船員の割合が多数を占めるので外国人船員の賃金や労働条件を定めている代表的な労働協約はJSUとAMOSUPが締結している「IBF JSU/AMOSUP IMMAJ CBA労働協約」(FOC船フィリピン人用)となります。その他にも「JSU/PSU Collective Agreement」 (日本籍フィリピン人用)がありますが、殆どの部分は同じ内容です。但し、細かなところで若干の相違もあるので、注意が必要です。

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