乗船中に乗組員が健康や娯楽のために行う『運動』の話です。残念なことですが、実際の船内生活においては心の奥深くに潜む鬱憤を吹き飛ばしたり、日頃の悩み事を忘れさせたりするほど楽しい出来事が稀有であることはまぎれもない事実です。昔は港での停泊時間も長く、上陸して日頃のストレスも完全に発散できたことでしょう。
大勢の日本人が乗船していた頃は、話題も豊富で、麻雀卓も2台、3台と毎日のように囲まれて、乗組員は賑やかな夜を過ごしていました。混乗船となり、さらに安全管理制度が強化された現在の船では、航海中は書類作業・雑務に追われ、入港しても忙しいだけで、心から休まる日は余りありません。そんな現在の船での数少ない楽しみと言えば、港に会いに来る家族との面会、航海中に見るDVD鑑賞、そして気の合った仲間で飲み交わすお酒やカラオケぐらいでしょう。
単調な船内生活では運動会が日頃のストレス、鬱憤解消に多いに役立ちます。皆さんは船内運動会をもう経験しましたか? 輪投げ、ビン釣り、ペットボトルボーリング、水汲み競争、豆つかみ競争、デッキゴルフ、バスケットボール、ダーツゲーム、パン食い競争等々、競技種目も多彩です。普段は仕事が出来ないと×の烙印を押された人物が意外と器用であったり、運動神経が抜群に良かったりして驚かされることもあります。船内運動会の日は、乗組員全員が童心に返って楽しめます。また、運動会後の夕食パーティーでのビールの味も格別です。
但し、運動会にも思わぬ危険が潜んでいます。聞いた話ですが、ある船で腕相撲大会を開催したときのことです。腕力自慢達が競い合って楽しく終了したので、2航海後の航海中に再び腕相撲大会を開催しました。甲板・事務部と機関部の2チームに分かれて接戦でした。そして盛り上がってきた最終戦で事件は発生しました。同じような体格の強者が手加減せずに本気で腕相撲したため、片方の人が右腕を骨折して、外地で緊急下船となってしまいました。
思わぬところに危険が潜んでいるものです。船内では日頃の運動不足を解消するために運動をする人もいます。ウォーキング、ランニング、バスケットボール、卓球、バトミントン、ウエイトトレーニング、ゴルフ等々様々です。船内運動を全面的に禁止するわけにもいきません。運動会は貴重な船内リクレーションの行事ですが、やはり怪我をしては結果論で判断されてしまいます。苦い経験から言えることは、腕相撲と綱引きはやめておきましょう。思わぬ怪我のもとです。そうは言いながらも、怪我を恐れていては運動会はできません。皆さんもおもしろおかしいアイデアを盛り込んで、怪我をしない競技を企画して楽しい運動会を是非開催してください。
船内生活は入港上陸時以外は外部との接点がなく、生活が単調になることは皆さんも十分実感していることでしょう。生活だけでなく、生活に使用する物までワンパターンになっていませんか?毎回、港で注文する日用品もついつい同じものを頼んでいませんか?ときには気分転換するために、目先を変えて、いつもと違った品物を購入するのも長い船上生活では多少なりとも刺激になって良いかもしれません。
そういう私も考えてみれば、非常に保守的というか、生活必需品は数十年間ほとんど固定化され、マンネリ化していました。例えば、ビールはアサヒスーパードライ、ウィスキーはサントリー角、シャンプはメリット、石鹸はDoveかビオレ、歯磨き粉はデンターライオンかWhite & White、洗濯洗剤はアタックというふうに銘柄が決まっていました。性格によるのかも知れませんが、毎回目新しい品物にチャレンジする人と長年愛用している品物をかたくなに変えない人の2種類に分類できるかも知れません。皆さんはどちらのタイプでしょうか?
