外洋では無理は禁物、でも港内では無理ができます。SFとBM

船体折損事故を防止するために重要なファクターとなる『SFとBM』の話です。

船体縦強度計算で確認すべき力はせん断力(SF: Shearing Force)と曲げモーメント(BM: Bending Moment)であることを皆さんは知っているはずです。積荷・揚荷計画を立てるときには、船体及び貨物の重量と浮力の関係によって生じる船体の曲がり、せん断、ねじれを一定限度内に収める必要があり、それをLoading Computerによって確認します。

もし、許容値以上の過大な応力が船体に働くとクラックが発生し、破断し、沈没という最悪の結果に至る危険性があります。Loading Computerがない時代では全て手計算で、膨大な表に数字を書き込み電卓をたたいて何時間もかけて強度の確認を行っていました。最近の航海士はコンピューターに入力するだけで、簡単に船体強度計算ができるのが当たり前になっており、その有り難味をあまり感じていないのではないでしょうか。

また、Loading ComputerがOn-lineで利用できて、SFやBMを24時間常時、監視できるシステムを搭載している船もあります。カーゴ、バラスト、燃料、清水の各タンクレベルをモニターしており、Computerが容量・重量を自動計算して現在の船体強度の状態を表示しています。

船体全体は浮力と重力が釣り合っていても、部分的には両者の差が大きなところがあり、その部分では船体を上下方向に切断する力が働きます。例えば満載のCargo Holdと空のバラストタンクの間に働く力です。これを「せん断力」と呼びます。また、波や貨物の加重により船を折り曲げようとする力が部分的に働き、これを曲げモーメントと呼びます。では、このせん断力と曲げモーメントをLoading Computerで計算する場合、航海状態(Sea Condition)と港内状態(Harbor Condition)の2種類があり、それぞれ強度の許容値が異なっていることを知っていますか?

波浪の影響を受ける外洋と受けない港内では強度の許容値が異なります。当然、港内のほうが許容値は大きいのです。許容値が大きいということは少々の無理には耐えられるということです。荷役作業においては貨物とバラストの関係で無理せざるを得ない状況が発生しますが、港内は波等外乱が小さいため、強度の許容値を大きくすることができて、かなりの無理が利きます。

LNG船のように全カーゴタンク同時揚げ、同時積みの場合には、さほど縦強度が厳しい状況にはなりませんが、鉱石船やタンカー等の場合はJumping Load/Unloadとなる場合があり、縦強度にかなりの無理がかかっています。ある船のHarbor ConditionのSF/BMの許容値はSea Conditionの許容値の160%/130%程度の大きさでした。港では港外に比べて6割り増しのSF、3割増しのBMまで無理をしても良いということを意味します。しかし、外洋に出た場合は、いかなる荒天に遭遇するかわからないので厳しめの許容値しか認められません。

通常、航海状態でも港内状態でもLoading Computerの計算結果で100%を超える積付けは認められません。もし、Loading ComputerすなわちLoading Manualを無視して強度不足の事故を起こした場合には言い訳できず、厳しく責任を問われることになるでしょう。船体が悲鳴をあげているか、いないかを常に把握・確認するのも航海士の仕事の一つです。最悪の場合は、以前発生した某船社のコンテナ船の事故のように船体が真っ二つに折れることも有り得るのです。

外洋で荒天に遭遇する場合、荒天対策の一つとしてバラスト水の増し張りを行うことがあります。台風や低気圧による大きなうねりや風浪を船体に受ける場合、通常の航海以上にバラストタンクをFullにしてプロペラのRacingを防止します。TPC100トンの船とすると、船体を50cm沈めるためには約5000トンの増し張りが必要となります。たかが50cmと馬鹿にしてはいけません。大きなうねりを船尾に受ける場合、この50cmが想像以上に効果があるのです。もし、台風や非常に発達した低気圧に遭遇するときには、船長に「バラストの増し張りは必要ありませんか?」と一言声をかけて下さい。きっと船長のあなたへの信頼度はうなぎのぼりです。

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