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制服は自分の気構えを示す道具なり

中には披露宴で着た人もいるはずの『制服』の話です。

古くは武将が戦地へいざ出陣するときには必ず鎧兜を身に着けました。馬子にも衣装です。現代でもある意味同じことが言え、現代では鎧兜が制服になっただけです。昔は船長さんに厳しく言われたものです。

「船内で自分の部屋を一歩でたら、そこはもう公の場所、だから服装にも気を遣い、それなりの格好をすべきである。船橋や食堂へは襟付きのシャツを着てくること。」 船橋や食堂はレストランやホテル等公共の場所と同じであるということです。船橋でTシャツに短パン姿、スリッパ履きは論外です。私も若い頃、Tシャツ短パン姿で航海当直に入って、船長から厳しく怒られたことがあります。

今は個人の価値観・人権が尊重され、自由という言葉で何もかもが「なし崩し的」になったところがありますが、やはり分相応の身だしなみ、TPOに相応しい服装というものがあります。かなり前の話ですが、某船舶管理会社では「着桟中の服装及び身だしなみの件」と題する通知を管理船に対して出状しました。あまりにも目に余る酷い身だしなみの航海士がいたために、このような通知がわざわざ書面になって出されたのです。「身だしなみの基準については一概に述べることはできないが、少なくとも当社の品位を落とさないものであり、顧客の身だしなみと同等以上であるべきと考える。」と書かれていました。

不適当なものとして、「過度の長髪」、「染髪」、「手入れ不十分の口髭」、「汚れた作業服での立直」、「外国人クルーの短パン、シャツ、サンダル履きでの陸上スタッフの多数いる場所への出入り」 が例としてあげられていました。当時はこんな常識的な当たり前のことをいちいち通知書で出状すべきでないという意見が多くありました。しかし、日本人でさえ、身なりについて完璧に守られているかと言えば、疑問符が付きます。ましてや多種多様な価値観を持つ外国人、文化習慣の異なる外国人を指揮統率して、船内規律を順守させるには事細かく手順や規則を定める必要があるのかも知れません。

会社が規定した「船員服装規程」を読んだことがありますか?英語で「Attire Regulations」と言います。意外と私達年配者よりファッションに敏感な若手航海士の皆さんのほうが興味を持ち、内容をよく理解している人が多いかもしれません。ちなみにこの「船員服装規程」には袖章や肩章のサイズや色まで規定されており、色線で職種を識別しています。甲板部が色線なし、機関部が油の色「紫」です。では無線部、事務部や医務部は何色でしょうか?今では見ることもなくなりましたが、無線部が陸の色「緑」、事務部が紙の色「白」、医務部が血の色「赤」です。

さらにこの「船員服装規程」には制服を着用する事例が6種類あり、儀礼(公式行事等)、来客応接(船上パーティー等)、航海直、入出港、停泊執務中、その他の執務・作業と規定されています。「船員服装規程」の具体的な内容は各自が乗船して確認するとして、ここで言いたいことは、対外的な場所、公の場所で制服を着る気持ちがあるかどうかです。

制服を着るときの心構えの問題です。確かに制服を着るのは面倒で手間がかかります。しかし、昔から言われているように船員は小さな外交官です。あるときは対外的に威厳を保ち、信頼を得るために、また、あるときは自分自身の気構えを示すために自然と制服を着る気持ちになることが重要なのです。

最近、「船員服装規程」で興味ある内容改訂がありました。女性航海士・女性機関士のための改訂です。女性の場合は、「儀礼時(公式行事)のみスカート着用とし、海上にあっては着用しないこと。」と定められています。さらに男性人には興味津々のスカート丈の長さまで定められています。「スカート丈は椅子に掛けた状態でスカートのすそがひざ一線となる長さとする。」と決められているのです。

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