船内の様々な局面で重要視されている『コミュニューケーション』の話です。
皆さんは上司と部下の「ほうれんそう」を知っていますか?「報告」、「連絡」、「相談」、略して「HO、REN、SO」。人間関係の良好な風通しの良い環境を作り、船上作業を安全かつ効率的に行うために私達は常にこの「HO-REN-SO」の意味を理解し、意識して実行しなければいけません。
ピンチに立たされ、危機的状況に陥ったポパイをホウレン草が救うように、いたる所に危機(危険)が潜在する船内では上司と部下の間で「HO-REN-SO」は必要不可欠です。ポパイはちょっと古過ぎましたが、船にとってのほうれん草である「HO-REN-SO」の具体的な意味は以下の通りです。
(1) HO (報告:Report)
部下から上司への報告です。作業の進捗状況や結果を上司に報告し、乗組員が情報を共有することによって作業をスムーズに行うことができます。困難に直面した場合でも一人で悩んだりする必要はありません。経験豊富で頼りになる船長やC/Oにどんどん報告して、有効な助言をもらいましょう。なお、報告にも以下の通り要領があります。これは報告書を作成するときにも当てはまる事項ですので覚えておいて損はないでしょう。
- 簡潔に報告する。
不要な尾ひれをつけたり、主観的な私情や意見が多すぎたりしてはいけません。上司が理解し易いように伝えておくべき情報を整理して客観的に要領よく報告しましょう。 - 最初に結論を言う。
上司に伝えたいことを強調するために最初に結論を言うことが重要です。そして結論を言ってから補足説明をします。前置きの長い報告は、のびたうどんやラーメンのように不味いものになります。 - 省略しない。
1. と矛盾するかもしれませんが、不要なことと勝手に判断せず、全体の流れを報告することです。相手は知っているはず、わかっているはずという思い込みはやめましょう。上司は自分が思っているほど、状況全体を把握していないものです。 - まあ、報告しなくてもいいかという妥協的な気持ちにならない。
上司はどんな些細なことでも、報告を待っているものです。上司への報告で道が開けることもあるでしょう。上司は報告の途中で話の腰を折ったり、間違いを指摘したりして、部下に報告しなければ良かったと思わせてはいけません。 - いつもと異なることに気づいたら報告する。
些細なことだと勝手に判断せず、小さな異常や不安も見逃してはいけません。小さな事にも危険が潜んでおり、少しでも早いうちにその芽を摘んでおくのが鉄則です。
さらに船長やC/Oへの報告でポイントとなることは、誰かのメッセンジャーでなく、自分の意思決定まで含めて報告することです。例えばある機器が壊れた場合、上司に「機械が壊れました」と事実だけを報告するようでは及第点はもらえません。もちろんケースバイケースで第一報としてはそれで良いのかも知れません。しかし、できれば自分でトラブルについて調査し、状況把握し、対応策を考え、それを上司に提案するレベルまで整えてから報告すべきです。
迅速性を求められている場合は、状況判断する前に上司に報告すべきかも知れませんが、急ぐ必要の無いトラブルに対しては十分自分なりに吟味し、自分なりに考え、対応策まで練って「原因は・・・の可能性があります。」「対応策として・・・したいと思います。」という意思決定までを上司に提案してこそ、有能な部下と言えるでしょう。
(2) REN (連絡:Communication)
上司と部下の連絡です。お互いの意思疎通のために連絡します。作業をスムーズに進めるためには、必要な事項を船長と航海士がお互いに連絡し合い、共通認識とします。決して一方通行や一人よがりではいけません。適切なタイミングで要点を連絡する人は船長の信頼を得ることができます。適切なタイミングで連絡を取る船長は航海士との距離が近づきます。適切な連絡の要領は以下の通りです。
- 電話、手振り、トランシーバー等々適当と思われる手段で連絡する。
顔と顔を合わせての連絡が一番でしょうが、無理な場合はその場で最適であ
ると思われる手段を選択して連絡します。 - トラブルに遭遇したら、躊躇せず迅速に連絡する。
前にも述べましたが情報はスピードと質が命です。いくら丁寧な連絡でも遅すぎては価値が半減。可能な限り早く連絡を取り合いましょう。
(3) SO (相談:Consultation)
上司と部下の相談です。作業の手順、注意事項、コツ等のアドバイスを船長やC/Oから受けることです。相談することにより、きっと問題解決に至る道が見えるはずです。自己だけの根拠なき、確証なき判断、行動は避けるべきです。船長やC/Oは部下の相談に丁寧に答えなければいけません。適切な相談の要領は以下の通りです。
- 状況把握、自分の意見等を頭の中で整理して相談する。
支離滅裂な話では、相手が理解できません。何がどうなっているのか?何をしたいのか?を落ち着いて順序立てて説明しましょう。 - 相手の意見を尊重する。
自分の意見ばかり言ったり、否定ばかりしていると、貴重なアドバイスをもらえなくなります。相手の話を真摯な態度で聞いて、受け入れるべきところは受け入れましょう。 - しっかり自分の考え、思いを伝える。
相談するときは、100%の受け身にならず、自分ならこうするという自分なりの対応計画まで用意します。メッセンジャーボーイで終わってはダメです。 - 最後まで、話をよく聞く。
早とちりしないよう、じっくりと相手の話を聞きましょう。相手の話の腰を折ることはやめましょう。 - 理解できないことは、理解できるまで、聞きなおす。
些細なことでもすべてクリアーにすることです。相手はわかったようでもわかっていないものです。折角の相談も誤解や理解不足があっては良い結果になりません。
「HO-REN-SO」は、誤解、あせり、情報不足等による作業の遅延、失敗、災害を防ぐために励行しなければいけません。特に混乗船で日本人職員と外国人部員間でこの「HO-REN-SO」を上手く機能させることです。前に紹介しましたが、「お願いだから報告して」から「よくぞ、報告してくれた」へ変えなければいけません。
また、船内だけでなく、船と会社の間でもこの「HO-REN-SO」が重要です。トラブル発生時の管理会社への報告が遅い、連絡不足がよく問題になりますが、まさにこの「HO-REN-SO」を念頭に置き、お互いの密な関係を維持する必要があるのです。