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投錨時に速度計を見なくても、何ノットかを知る簡単な方法

三航士や二航士のときにはほとんど経験しない『投錨作業』の話です。

私は錨地へアプローチ中、残り数ケーブルになったときに船首にスタンバイしている航海士(C/Oや1/O)に船橋から「今、オモテは何ノットかな?」とときどき尋ねるようにしていました。やはり経験豊富な航海士になればなるほど、目測によってほぼ正確な船速を返答してくれます。最近はドップラーログの性能も良くなり、船橋で表示される船速が非常に正確になりましたが、投錨するときはやはり船首における実際の船速を目視で確認することが基本中の基本です。

船橋から海面を眺めて船長自らが行き足を確認しますが、実際の錨は船橋から1ケーブル以上も離れた遠い場所にあり、船首が大きく左右に振れ回っている可能性もあり、現場(船首)のC/O(1/O)の目測で得た船速の確認が必要であることは言うまでもありません。ベテラン航海士ならば海面や船首を流れる波の動きを見ただけで、おおよその船速がわかります。

実は目測で速力を測る簡単な方法があります。木の葉や波の泡が海面上の1mの距離を通過するのにかかった秒数を測るのです。しかし、甲板上から海面を眺めるだけでは、海面上の1mの長さを知るのは非常に困難です。比較対象物がないと海面上のどれだけの長さが1mなのか見当がつきません。そこで、船首のドラフトマークを長さの目安にするのです。海面付近のドラフトマークの1m分の長さを海面上に当てはめて、1mの間隔を目見当でつかみます。

そして船速の計測開始です。もうおわかりでしょう。例えば1mの距離を1秒間で木の葉が移動すれば2ノット(正確には1.94ノット)、1mの距離を2秒間で移動すれば1ノットです。こうして非常に簡単におおよその船速を把握することができるのです。「1mを1秒で2ノット」と覚えておけば良いでしょう。このようにちょっとした「コツ」「技」を仕事で有効活用できるかどうかが、ベテラン航海士と若手航海士の差になります。

入港S/B中に防波堤まであと○○m、ドルフィンエンドまであと○○mと船首尾配置員は船橋に報告します。このときの距離はもちろん目測です。目測には誤差が結構あります。もし、600mの距離を「あと300mです。」と船橋へ報告すると日頃から築き上げてきた船長の信用を一瞬にして無くすこととなります。ベテラン航海士になればなるほど、正確な距離を報告してきます。ベテランは多くの経験を積み自分なりの距離感をつかんでいるのです。

経験が少ない若手航海士がベテラン航海士に負けないよう距離を目測で知る「コツ」があります。それは、あらかじめ正確にわかっている物標の距離と比較することです。例えば本船の幅、長さ、フェンダー間の距離、陸上ドルフィン間の距離、Turning Basinの直径等を事前に頭にインプットしておけば、その対象物の何倍の距離、何分の一の距離に相当するかを目測することにより、でたらめな距離を報告することはなくなるはずです。但し、私の経験では、タンカーのSBM係留作業時は、海上に距離を比較する物標が何もないので、ブイまでの距離を目測するのに非常に苦労した覚えがありますが・・・・

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