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本船の航海灯はどこに付いているのですか?

球切れでもない限り、あまり意識することもない『航海灯』の話です。

乗船した船で、航海中に航海灯(船首マスト灯)の電球が切れて船橋の警報が鳴りました。そこで外国人の2/Oが船首マスト灯を交換することとなり、予備電球を持って船首へ行きました。しかし、船橋から彼の作業をじっと観察していると、何の躊躇も無く船首のアンカーライト(錨泊灯)を交換しようとしています。

慌ててトランシーバーで間違っていることを連絡しました。冷静に考えれば360度照らす全周灯である錨泊灯と遮蔽板の付いた航海灯を間違えるはずがありません。船首マスト灯は船首方向225度を照らし、その後方を照らさない構造となっています。それを間違うということは彼がこの種の作業を経験したことがないという証拠です。

それから数ヶ月後の話です。2/Oは既に交代して後任の新しい2/Oとなっていました。同じように航海中、今度は船尾灯の電球が切れて船橋の警報が鳴りました。2/Oが予備電球を持って船尾へ行き、電球を交換しました。2/Oから船橋へ点灯テストするようトランシーバーで依頼があり、船橋でスイッチを入れましたが、点灯しません。よく調べてみると、前回同様に船尾灯と船尾錨泊灯を間違えて、錨泊灯の電球を交換していたのです。作り話のようですが実話です。

2人続けて航海灯と錨泊灯を間違えたことにびっくり仰天です。唖然としましたが、これが外国人航海士の乏しい現場力です。2/Oにもなってこのレベルかとがっかりしますが、よくよく考えてみるとこのようなミスを犯すのは外国人航海士に限りません。経験の少ない日本人航海士でも同じような失敗をする可能性があるのではないでしょうか?皆さんもよく聞く言葉でしょうが、「まず現場を知ること。現場を知らずして仕事はできない」です。現場を見て、知って、考える力 =「現場力」を高めましょう。

同じ間違いをした別の外国人3/Oもいました。午前の当直中に航海灯(船首マスト灯)が切れました。当直に私が入って3/Oを航海灯の交換に行かせました。すると、先ほどの外国人2/Oと全く同じことをしました。錨泊灯を交換しているのです。私達が想像している以上に航海灯がどれか知らない航海士が多くいるのかも知れません。

また、ある船で、デッキを散歩中にふと船尾灯を覗いてみると、何か違和感のある白熱電球です。よく見てみると艶消しの白熱電球が付いているではありませんか。艶消しの一般照明用の白熱電球を使用しているのです。誰かが船尾灯が切れて交換するときに、間違ってどこからか照明用の白熱電球を持ってきて取り付けたのです。航海灯は船舶用の型式承認を受けた透明で耐震性のある特別仕様のフィラメントを使った船灯白熱電球なのです。

一般照明用ランプでは所定の能力(到達距離)を発揮できません。予備航海灯のラベルを見て下さい。「この電球は船舶安全法に基づく船用品型式承認品です。一般照明用電球及び耐振用電球を使用致しますと、船灯の性能を発揮できませんので、船灯には船灯用電球をお使いください。」と注意書きがあります。若い航海士で航海灯に関する知識や経験がない人が意外に多いようで、乗船するたびに若い航海士に教えている気がします。

あまり大きな声では言えませんが、私も人には言えないような恥ずかしいミスを幾度となく犯してきました。要は経験の有無です。一度、恥ずかしい失敗や大変な苦労をしておけば、二度と同じ間違いはしないはずです。若いときの失敗はWelcomeです。自分が成長するための「肥やし」です。「失敗できる」のは若さの特権です。皆さんも若いうちにどんどん失敗をして、恥をかいて経験を積んでください。

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