安全にあまり関係ないようでいて、実は大いに関係のある『整理整頓』の話です。
「黙って座れば、ピタリと当たる」という占いではありませんが、「ログブックを見れば、ピタリと当たる」とは何のことかわかるでしょうか?ある人から聞いた話ですが、内部監査でログブックの内容をチェックしたときにログブックに必要な記録記事がきちんと正確に記入されているかどうかで、その船がSMS関連書類やチェックリストを適切に記録・管理しているかどうかがわかるそうです。
ログブックに記事を正確に記入している船は他の記録書類にも目が行き渡り、適切に記録・保管しており、内部監査やSIREでの指摘事項が少ないそうです。ですからログブックの内容を見れば、その船がどれだけ安全に対する意識があるのか、SMSをどれだけ遵守しているのか概ね見当が付くそうです。ログブックをいい加減に記入している船はSMSやSIREへの対応もいい加減であるという傾向が見られるのです。
本船の安全に対する姿勢の良否の見当が付くのはログブックだけではありません。「5S活動」という言葉を皆さんはどこかで聞いたことがあると思います。ログブックと同じように「5S」を見ればその船の管理レベルや乗組員の意識の高低がわかると言われています。5Sとは日本語でSから始まる言葉5つを意味します。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」です。5Sは陸上の工場では古くから唱えられてきた言葉ですが、この5つの「S」を船内の仕事に当てはめてみるとどうでしょうか?
「整理」することにより、不要なものを廃棄し、いざというときに迅速かつ適切な船用品や予備品を利用することが可能で、作業の効率化や安全性向上につながります。
「整頓」を強化することにより、機能的な状態を維持するために必要なものしっかり管理し、船用品や予備品の在庫管理がしっかりできて、Dead Stockもなくなります。
「清掃」「清潔」を強化することにより、作業環境が改善され、作業効率が高まり、不安全行動の減少も期待されます。
「躾(しつけ)」を強化することにより、決められたことを確実に行い、船内規律の遵守徹底やモラルの向上が期待できます。皆さんも知らず知らずのうちに、上司の人から5Sに基づく教育指導を受けて、立派な航海士になりつつあると思います。
予備品の整理でよく問題になるのが、中古の予備品の保管です。船齢の古い船になるとストアーの片隅に使用できるか、使用できないか不明の予備品が無造作に置かれていることがあります。また、ときには「まだ使用できるが取り替えたので予備として保管」と書かれた予備品を見つけることがあります。誰でもこんな不確実な予備品を使用したくはありません。この中古予備品を使用して何かあれば誰が責任を取るのでしょうか。
まだ非常時用として保管しているのならば、ある程度理解できますが、明らかに使用できないような予備品がなぜ保管されているのか理解しかねるときがあります。使用不可な予備品はもちろんのこと、不要な中古予備品、使用に不安が残る予備品はEmergency以外は廃棄処分とすべきです。「片付け上手は捨て上手」です。
よく聞く話として、「机の中の整理整頓状態はその人の頭脳の思考パターンと同じである。」と言われます。ある人の机の中の鉛筆や書類の整理整頓の仕方を見れば、その人の思考状態のおおよその見当がつくのです。机の中が乱雑で整理整頓できていない人は作業の段取りや計画が上手に組めない人と見られます。机の中が整然と片付けられている人は仕事に対しても几帳面に取り組むという印象を持たれます。
もちろん、これが全てに当てはまるとは言いませんが、やはり机の中といえども乱雑で整理整頓ができないよりは、きちんと片づけている人が好印象に受け止められるでしょう。皆さんも自分の机の中を今一度見て、あまりにも乱雑にしているなら、一度整理整頓してみましょう。すべてはそこから始まります。